35年超しにアニメ化 京アニ事件で犠牲になった『天才アニメーター』が遺した絵本 仲間たちが新たな命を吹き込む 「なんとか追善供養はできたかな」
「ONE PIECE」などが代表作の進藤満尾さんは、表情豊かなキャラクターを描いたコンテを見せてくれました。 【進藤満尾さん】「このまましゃべると、ちょっと弱いじゃない。だから一瞬、リアクションでにらみつけておいて、それでジャムにあーだこーだって、ここで言わせて…」 キャラクターの動きに細部までこだわって作られていることが分かります。
■アニメが完成 作品に込められたメッセージは…
そして、今年3月上旬。ついに17分のアニメが完成し、同月24日に試写会が行われました。 【ジャム】「オップと仲良くなるにはどうすればいいんだろう」 「ねえねえ、おじいさん、ぼくに魔法を教えてよ」 【おじいさん】「はあ!(魔法を使う)これは魔法のパンじゃ。いいかい、例えばおまえの心が勇気を持てたその時、奇跡は起きるのじゃ。一度だけ魔法が使えるんじゃ」 魔法のパンをどう使うのか悩んでいたジャム。しかしある時、オップがおなかをすかせていることに気づき…。 【ジャム】「オップ、おなかすいているの?」 「このパンをオップにあげなきゃ。でも、これをあげちゃうと魔法が使えない」 ジャムは大切なパンをオップにあげることを決意します。すると突如、ジャムの体が光に包まれ…。 【ジャム】「ぼくは魔法を使えるんだ」 【オップ】「ほんとか?」 【ジャム】「オップの夢をかなえよ!ジャムクル ミラクル パンパカパーン!」 【オップ】「なんだ?うわーっ、まぶしい!」 アニメの上映が終わり、拍手に包まれた会場。 監督の本多さんたちは、この作品を「世界の子供たちに広めていきたい」と、シリーズ化を目指します。 【監督 本多敏行さん】「先日、木上くんのお母さんと奥さんにお会いしました。だいぶ喜んでくれましたんで。多分、彼の性格からして(木上くんも)『よくやってくれました』と言ってくれるんじゃないかなと思ってます」
原画を担当した中村さんは、涙を拭いながら話しました。 【アニメーター 中村英一さん】「一緒にやってたもんで、目の前に彼が現われるんです。今日できあがったのを見て、なんとか追善供養はできたのではないかなと思って」
今回制作に携わったメンバーが作品に込めた、子どもたちへのメッセージはこちら。 【ジャム】「ぼく、たくさん魔法が使えるようになりたい!」 【おじいさん】「焦らないことじゃ。自分で感じて、自分で考えて、自分で行動するんじゃ」 天才アニメーターが残した作品は、仲間たちの手によって新たな命が吹き込まれ、35年越しに動き出しました。 アニメは中国のSNS「Zhihu(ジーフー)」にて一般公開されます。 (関西テレビ「newsランナー」2024年3月25日放送)
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