EVシェア欧州拡大へ急加速! 中国「奇瑞汽車」戦略的合弁と生産拠点構築、垣間見える“中国ビッグ5”のメンツとは
新興EVメーカーとの合弁で前進
これまでは、中国自動車メーカービッグ5のなかで最も劣勢に立たされてきたといっても過言ではない奇瑞汽車だが、今回の一連の報道を俯瞰(ふかん)すると、欧州市場へのアプローチが、他の中国自動車メーカーよりも際立っていることがよくわかる。 奇瑞汽車は、関係の近いタタ/JLRとのパイプを強固にしながら、他の欧州プレミアムブランドにもEVプラットホームを共通化することで、ブランディングの向上を狙っている。さらに、新興EVメーカーとの複数の合弁会社設立によって、欧州市場でのプレゼンスを強化し、グローバルでの存在感をアピールしていく狙いがあるようだ。 こうした動きを短期間で一気呵成(かせい)に仕掛けてきたところをみると、欧州市場に取り組んでいく本気度を垣間見ることができる。すでに欧州市場に参入している長城汽車も欧州戦略を見直すとしており、長期的なグローバル戦略の一環として、欧州市場での存在感を強化することが重要視される傾向にある。 日本では奇瑞汽車の車両は販売されておらず、一般にはなじみのない自動車メーカーだが、奇瑞とは中国語で 「とりわけ万事めでたく順調」 という意味がある。奇瑞汽車が設立された1997年以降の2001年には、中国自動車メーカーとして最も早く海外へ輸出したことで知られ、設立当初からグローバル志向が高かったことをうかがい知ることができる。 英語名の「Chery」は、さくらんぼを意味する「Cherry」に由来するらしいが、GM傘下のブランドであるChevrolet(シボレー)の愛称として知られている 「Chevy(シェビー)」 に酷似し、過去にはGM製車両にデザインが似た車両も発売されるなどで、GMが何度か告発した経緯もあったようだ。 そんな、いわくつきの社名に込められたように万事が順調に進んでいくのか、今後の奇瑞汽車の欧州市場でのEV事業が実を結ぶか、注目していきたい。
河崎賢二(自動車マーケター)