『呪術廻戦』が「ギネス世界記録」に認定された「世界でもっとも需要の高いテレビアニメ番組」の「認定基準」
実は「呪術廻戦」以前にも…
「呪術廻戦」以前にこの“世界でもっとも需要の高いテレビアニメ番組(Most in-demand animated TV show)”※の記録を保持していた作品は、テレビアニメ「進撃の巨人」でした。 ※ギネス世界記録ホームページ上のレコード表記はMost in-demand anime TV show レコードの詳細ページによると、「進撃の巨人」の記録は昨年2023年1月末に達成されたものとのこと。同じくParrot Analyticsによる分析で、世界的な需要を示すレーティングが、平均的なTV番組の68.2倍を示したことによるものです。つまり今回の「呪術廻戦」の記録は、この「進撃の巨人」が保持する記録を68.2倍から71.2倍に塗り替えることで達成されたもののようでした。 ここでひとつ不思議なのが、実はこのテレビアニメ「進撃の巨人」によるギネス記録というのが、概観する限り日本国内ではほとんど注目・報道されていなかった点です。実際に、“進撃の巨人 ギネス”等で検索してみると、当該記録ではなく、原作の超大型版コミックス「巨人用 進撃の巨人」が“出版された最大の漫画本(Largest comic book published)”としてギネス世界認定されたニュースの方が、検索結果を大きく占めます。 これは推測ですが、作品公式側(講談社)が挑戦した上記漫画本の記録と違い、テレビアニメの記録は第三者であるParrot Analyticsのデータを基にした記録ということで、後述するように、作品公式側も反応してよいものか、判断が難しいところがあったのかもしれません。
世界でのアニメ展開、その距離感とハードル
過去の記事でも触れている通り、特にコロナ禍以降、世界でのアニメ人気や作品展開の様子が日本国内に向けても頻繁に報じられるようになってきました。 その一方で、今回の「呪術廻戦」の認定に関する詳細やアニメ「進撃の巨人」の記録が英語の情報に限られ、日本国内ではなかなか確認できなかったように、言語的なハードルや情報との距離感も依然として存在しているようです。 特に今回のParrot Analyticsをはじめ、耳慣れない(そして恐らく普段あまりやりとりのない)海外企業や団体が関与する記録や受賞に対しては、信憑性や公式/非公式性の観点等から作品公式側も容易に反応してよいものか、なかなか判断が難しいところなのだと思います。 とはいえ、あまりにもノータッチすぎれば、今回みつけたテレビアニメ「進撃の巨人」のギネス記録のように、せっかく世界で獲得した功績が、あまり日本国内では注目・報道されずに、人知れず埋もれてしまうといったことも生じかねません。もしかすると、作品公式が発表をしなければ、今回の「呪術廻戦」のギネス登録も、国内ではあまり知れ渡らずにいたのではないでしょうか。 今回は「呪術廻戦」アニメ公式側から発表があったように、近年は、日本国外の企業や団体が主催する記録やアワードに、日本の作品公式アカウントも反応を示すといったことも徐々にみられるようになってきました。 アニメが益々世界中で楽しまれ、評価される機会も増えてきた昨今、今後はせっかくのこうした世界での功績が知られずに終わらないよう、情報が日本国内のファンにも伝わり、アーカイブとしての記録も残っていくことを願わずにはいられません。
小新井 涼(アニメウォッチャー)