「工業高卒」を奪い合う建設業界。求人倍率は大学生に比べ約10倍
普通科学生の採用育成を充実させよ
上記は2019年度に新卒・中途で建設業の採用市場を図式化したものだ。 少子化にも関わらず建設業に新卒で入ってくる学生は年4万2000人と微増~横ばいで減っていない。 しかし工業高校の数は減っているので、その分、普通科卒業生が増えていると推測される。前述したように工業高校の学生は大手企業の採用が多いため、中小企業では普通科の学生や業界未経験者を採用・育成する企業が増えている。 筆者の所属企業の取引先の事例を紹介したい。 山形県新庄市の土木工事会社・新庄砕石工業所(新庄砕石)だ。新庄砕石は公共工事中心のいわゆる「地元の土木建築業」だが、山形大学、新潟大学などの大学卒の新人を毎年コンスタントに採用している。しかも工学部だけでなく、法学部などの「文系」の学生も入社している。 この企業では、SNSを軸にした情報発信に加え、都内のベンチャー企業と連携し、3Dプリンターを活用した施工や書類業務のデジタル化(DX)など新しい取り組みにも積極的だ。 また、文系の学生でも施工管理業務に従事・資格取得ができるよう、独自に技能トレーニングが出来るトレーニングセンターを開設するなど、育成環境も整備している。建設系の学科ではない入社3年目の社員が、国交省の安全発表大会で最優秀賞を受賞するなどすでに実績も出ている。 面接時にDXなどの新しい取り組みや、人材育成についてきちんと若手人材に伝えることは、応募からの採用決定率を高める上で効果的だといえる。
きちんとした自社サイト、わずか3~4%
建設業の職人は法令で有料人材紹介(職業安定法32条)が制限されている(営業や施工管理に関しては法的制限が無い)ため、人材を採用するには情報発信が不可欠だ。 工業高校の学生の採用に成功している中小企業を筆者が全国で調べてみたところ、ほぼ全社が自社Webサイトに力を入れていた。写真付きの施工実績、現場の様子を紹介する動画ページ、どんな人が働いているかの説明ページなど、業界未経験者にも分かりやすい工夫が凝らされている。 また、問い合わせに社長が「即レス」するなど対応も徹底されている。 他方、都内で筆者が調査をしたところ、施工実績、求人情報、SSL認証(情報セキュリティ認証の一種)といった「きちんとした自社サイト」を整備している企業はその地域の全建設会社(行政上の許可業者)の3~4%しかなかった。 「人が採れない」と言いながら、実際は自社サイトさえ整備しておらず「知ってもらう努力」をしていない会社が多い。
高木健次