「工業高卒」を奪い合う建設業界。求人倍率は大学生に比べ約10倍
減少する工業高校、年収の問題
「就職に強い」にも関わらず、工業高校は減少を続けている。 1970年代に全国736校あった工業高校は2020年度526校まで減少(文部科学省・学校基本調査)。定員割れの学校もある。 工業高校が減っている背景には、企業側の給与制度が時代の変化に即していない面もある。 厚生労働省の賃金構造基本統計調査「学歴別にみた初任給」を見ると高校卒と大学卒の初任給の差は2015年から、月額で4万円前後で推移しており、大卒のほうが高い状況が続いてきた。 2022年度の同統計で40代時の平均年収を見ても、高校卒と大学卒を比較すると大学卒の方が160万円ほど高い。 一方で、高校卒の初任給引き上げに動く企業もある。 住宅業界大手の積水ハウスのグループ会社は2023年4月に高卒新入社員の初任給を月収ベースで11%引き上げ、積極的に高卒人材(住宅技能工)を採用する方針を打ち出している。 最新の2024年度の統計(産労総合研究所)では高校卒、大学卒とも初任給が大きく上昇したが、上昇率では高校卒の初任給の方が若干大学卒を上回った。 工業高校の学生が大手企業に就職し、一部の企業が「需要と供給」に合わせて高校卒の初任給を上げ始めた兆候と言えるかもしれない。 ただし、初任給が上がっても、すぐに高校卒と大学卒の平均年収の差が解消されるわけではない。新卒だけでなく、既存社員についても給与・評価制度の見直しをする必要がある。 建設業は資格や技術、経験を持つ技術者の在籍が、行政上の許可や受注などで重要な業界だ。資格保有者の退職は最悪の場合、会社の倒産、廃業にもつながる。 高校卒の有資格技術者と大学卒の無資格者。どちらが会社にとって「辞められたら困るのか」を考えたい。
「若手人材」を採れない理由
では、工業高校学生の「奪い合い」が過熱するなか、中小建設会社は若手人材の採用のために何に取り組めばよいのか? 筆者の所属企業の取引先で会社にヒアリングすると、厳しい採用環境であっても、以下のような企業も確実に存在している。 文系大学生に絞って10年活動して安定して新卒が採用できるようになった 業績が伸びていて、年功序列も無いので、他社からの経験者転職が多い(毎月4名応募あり) こうした企業はなぜ採用できるのか? ポイントになるのが「人材育成の充実」と「情報発信の見直し」だ。