多浪で「上智神学部」受験コスパに固執した彼の改心。現役で静岡大に推薦合格したものの、浪人を決意した理由
こうして、西村さんは大学を辞めての浪人・編入浪人を経て、3年遅れで上智大学に進むことが確定しました。 念願の「都会での大学生活」を実現した西村さん。浪人してよかったことを聞いてみると、「やりたいことを見つけることができた」、頑張れた理由については、「大学で好きな勉強をしたいと思えたから」と答えてくれました。 「私はほかの人から3年遅れたぶん、自分の人生とか、自分がどういうことをやりたいのかを考える時間が長かったと思います。その時間があったからこそ、自分がしっかりやりたいことを見つけることができたので、振り返ってみるとよかったですね。
静大を辞めたときの浪人は背水の陣で必死でした。でも、編入のときはやりたいことが明確で、『しなければならない』が『したい』に変わったから、よかったのだと思います」 ■上智神学部に進学後の生活 上智大学に3年生から入学した西村さんは、その2年間も、新聞配達をして学費を稼ぐことと、卒業の単位をしっかり取得することに時間を使いました。 厳しいスケジュールの生活の中でも、仲間や先生たちと良好な関係を築き、学びたい勉強に打ち込めた2年間はかけがえのない日々だったそうです。
「神学部では、学生が40人しかいないのに先生が10人くらいいて、とても手厚く指導してくださったため、先生方と密な関係を築けました。私は中退の経験もありますし、地元も地方なので学費や生活費を稼ぐために新聞配達をしていましたが、そうした状況を知った先生にご飯をご馳走していただけたのでありがたかったです」 上智大学の神学部は3分の1が神父など宗教系の仕事、3分の1が学校の先生などの公務員系の仕事に就くそうで、民間就職をする人の割合は3分の1程度と少ないようです。西村さんは自分の経験を見事に昇華し、大手サービス業から内定をもらって現在もその会社に勤務しています。
■コスパの良い人生からの脱却 「年齢や過去の経験を変えることはできないので、書類には正直にすべて書きました。静岡大・三重短大・上智大学の3校の経歴をすべて書いて、面白がってくださる会社に就職しようと考えたのです。 書類が通らないのであれば、むしろその段階でアンマッチだとわかるので、経歴を明かすことで、むしろ正直な自分を評価してくれる会社に出会うことができました。 思えば、浪人するまでは特に目的もなく、効率的にコスパよく生きようと思い、人生をステップアップしていったのですが、浪人を通じて自分がやりたいことを見つけ、そのために遠回りする道を選ぶことができたので、それが今の仕事や、頑張る姿勢につながっていると思います」
「コスパの良い人生」から脱却し、現在の人生を歩む西村さん。その様子からは、努力しないための努力をしていたかつての面影はなく、遠回りを楽しみ、前向きに生きる様子が感じられました。 西村さんの浪人生活の教訓:正直に生きることで活路は見いだせる
濱井 正吾 :教育系ライター