HV特許を無償提供するトヨタの真意 そして電動化への誤解
各社が対応迫られる「ZEV」と「CAFE」規制
さて、もう1つ予備知識として知っておかなくてはならないことがある。現在、温室効果ガスに関する法的規制はアメリカの「ゼロエミッションビークル規制」(ZEV)、中国の「ニューエネルギービークル規制」(NEV)に代表される、「温室効果ガスを排出しないクルマを全生産台数に対して一定比率で販売しなければならない」というZEVの促進的な規制と、「自動車メーカー毎の販売車両の総平均値で温室効果ガスの削減目標を定められる」という企業平均燃費規制(CAFE)の2つがある。どちらも規制値を守れないと、達成して「余剰枠」を持っている会社から「余剰枠」を買わなくてはならない。 ZEV規制に対応するにはどうしてもEV(またはFCV)が必要だ。というより、これはHVでは達成できない。HVは2018年以降、ZEVとして認められなくなったからだ。例えば、2020年にはトータルで7.0%をZEVにしなくてはならない。ただし内輪の3.0%まではPHVをカウントに入れることができる。 平たく言えば、ZEV規制は「すごい環境性能のクルマを決められた台数(総販売台数に対するパーセンテージ)だけ販売しなさい」というルールなので、例えば20年のZEV規制を何が何でもクリアしようとすれば、全生産台数の4%だけEVを作って叩き売る方法がある。PHVも3%に届かないなら同様だ。利益を圧迫するので簡単な話ではないが、所詮限られた台数であり、どっちみち罰金的なクレジットを買わされるくらいなら、その分を値引きに回してしまうという考え方も成立するのも一面の真実だ。ただし、義務付けされる比率は年とともに増えて行くので、そういう泥縄的なやり方はいつまでも続けられるわけではない。 直近の問題はCAFEの方で、こちらは「売れるクルマの環境性能を上げなさい」という規制なのだ。販売したクルマの平均値なので、すごい性能のクルマを少しばかり叩き売りしてもどうにもならない。販売するクルマの燃費をひらすら地道に良くするしかない。