Farfetch、Matchesの二の舞を避けられるか。 Ssense が取り組むECのストーリテリング
ソーシャルメディアにより新たな次元での情報の透明性とアクセシビリティが提供されるようになり、一般消費者はファッションやマーケティングについてかつてないほど知識を深めている。ラグジュアリーeテイラーのエッセンス(Ssense)は2024年春の子ども服バイラルキャンペーンで、この2つの真実にスポットライトを当てている。 8本の動画によるこのキャンペーンは、3月18日の週にエッセンスのインスタグラムを通じてスタートした。どの動画にも子どもが1人でスペリング・ビー(spelling bee、英単語の綴りの正確さを競う大会)に参加しており、答えるべき単語はその子が着ているデザイナーブランドだ。 たとえば、トムブラウン(Thom Browne)、リックオウエンス(Rick Owens)、エコーズラッタ(Eckhaus Latta)などのブランド名のスペルを綴る前に、子どもは「生産国はどこですか?」「(その単語を使った)例文をお願いします」など、そのブランドにちなんだ質問を1つか2つ尋ねる。ナレーターは「トムブラウンのショートスーツは1マイル離れたところからでもすぐわかる」とか「全身コリーナ・ストラーダ(Collina Strada)を身に纏ったあの少女は超ポップな妖精そのもの」というように、各ブランドの特徴に触れながら例文を提示する。
子ども服カテゴリーの認知度向上をめざすキャンペーン
エッセンスのクリエイティブ・コンテンツ責任者であるトム・ベトリッジ氏は、このクリエイティブコンセプトについて、「人々の生活において、ファッションの役割がどのように変化してきたかを表現したかった」と語った。「1990年代、つまり、映画『ズーランダー(Zoolander)』の時代を振り返ってみると、ファッションは非常に近寄りがたくてよくわからない、エリート主義的な存在だった。今では子どもたちを含め、より多くの人々がデザイナーについて知っている」。 現在進行中のこの文化的な変化は、ベトリッジ氏の言葉を借りると「あらゆる人をファッションファンに変える」というエッセンスの基本理念と一致するものだ。 このキャンペーンのビジネス的な狙いは、創業21年になるエッセンスの子ども服カテゴリーに対する認知度を高めることである。2021年にスタートしたこのカテゴリーは、ウィメンズウェア部門責任者のブリジット・シャルトラン氏が担当している。エッセンスはコリーナ ストラーダやエコーズ・ラッタなどのプレタポルテのデザイナー(ready-to-wear designer)による子ども服の独占小売業者であり、ミニミー(mini-me、自分の子どもの意)の服を展開する有名ブランドに注力することは戦略的な動きだ。 「これらのブランドのファンでありながらそのブランドに子ども服展開があるとは知らない人々にとって、当社が取り扱っているということを知るのはとても喜ばしいものだ」とベトリッジ氏は語る。 このキャンペーンは明らかに注目を集めた。インスタグラムの動画は広くシェアされ、3月26日午後の時点での累計視聴回数はオーガニックで1400万回に近づいた。ローンチメトリックス(Launchmetrics)によるとキャンペーン開始から4日間で、ソーシャルメディアプラットフォーム全体における16件の投稿を通じて、メディアインパクトバリュー総額が35万2000ドル(約5327万円)に達したという。トムブラウンに焦点を当てた最初のインスタグラム投稿が、10万5000ドル(約1589万円)と最大の価値を生み出した。トムブラウン、エコーズ・ラッタ、コリーナ ストラーダなどのブランドは、自社ブランドを取り上げたインスタグラム投稿に協力し、そのキャンペーンをそれぞれのフォロワーに拡散した。 「我々にとってインターネットを最大限に活用した瞬間だった。(キャンペーンの)主な狙いは認知度の向上であり、それを達成できた」とベトリッジ氏は話す。サイトトラフィックや売上への影響については、判断するのは時期尚早だと同氏は続けた。