異星人の侵略に対して「人権」は無意味…人類の無力さを考える「思考実験」
クローン人間はNG? 私の命、売れますか? あなたは飼い犬より自由? 価値観が移り変わる激動の時代だからこそ、いま、私たちの「当たり前」を根本から問い直すことが求められています。 【写真】異星人の侵略に対して「人権」は無意味…人類の無力さを考える「思考実験」 法哲学者・住吉雅美さんが、常識を揺さぶる「答えのない問い」について、ユーモアを交えながら考えます。 ※本記事は住吉雅美『あぶない法哲学』(講談社現代新書)から抜粋・編集したものです。
人類が間引かれる日
今のところは人類が地球を支配しているから、自分たちの中で人権をより普遍化させるにはどうしたらよいか、などの議論に専心することができている。しかし、もしこんなことが起こったら? 人類というケダモノが、美しい地球の環境を日に日に悪化させ、生態系も破壊している。このことに憤った、地球人よりも1億倍知能の高い異星人が、これ以上の地球破壊をさせないために地球に到来した。増えすぎて地球やその自然に狼藉をはたらく人類を間引きしにきたのである。 異星人は人類の代表者と会見し、その旨を伝えた。人類代表は狼狽しながら「なぜ我々があなたたちに理不尽に殺されなければならないのですか? 地球の問題は我々の理性と知性で解決しますから、出て行って下さい」と答えた。 しかし、異星人代表は「お前たちの低い知能では無理だ。後先考えず無闇に繁殖して自然環境を破壊してエネルギーも枯渇させて。放っておいたらしまいにはお前たちで共食いということになるのが目に見えている。お前たちが自分たちを適正な数に抑えることができないならば、我々がそうしてやる」と突っぱねた。
人類は特別な存在ではない
人類「何を言うんです! 我々は一人一人、かけがえのない個人であり、人権を持ってるんですよ! それをあなた、まるで野生ジカかなんかのように……」 異星人「人権? なんだそれは? 愚かなお前たちの間だけで通用する互助精神か? そんなもの我々の知ったことではない。お前たちはシカを間引く時に一頭一頭のシカ権など考えたことがあったか?」 人類「我々はシカではありません! 霊長類最高の知性をもって文明を築き上げてきたのです」 異星人「ならその知性とやらを発揮して、無駄飯食らいだけの人間どもを世界中から選んで始末して、最小限のエネルギーで生き延びられる優秀な個体だけを選抜して計画的に繁殖させるとか、自分たちでさっさとやってみろ」 人類「なんてことを! それは酷い人権侵害ですよ!」 異星人「我らより知能の低い種の内輪の事情など知らん。我々にとって人類など、お前らが何の躊躇いもなく殺戮している蟻のようなものだ。話にならん。よしわかった。自分たちでできないなら、我々がお前たちを間引いてやろう」 こうして知能の高い異星人たちは、即座に人類という動物種を、有無をいわせず間引きはじめたのだった。 真っ先に間引かれたのは世界中の法学者だったとさ。 さらに連載記事<女性の悲鳴が聞こえても全員無視…「事なかれ主義」が招いた「実際に起きた悲劇」>では、私たちの常識を根本から疑う方法を解説しています。ぜひご覧ください。
住吉 雅美