日本選手権「2年連続二冠」でも…遠かった五輪の舞台 それでも“遅咲きのスプリント女王”君嶋愛梨沙(28歳)が目指す「10秒台の世界」
女王の貫禄勝ちだった。 新潟で行われていた陸上の日本選手権。女子100m決勝は、好スタートを切った君嶋愛梨沙(土木管理総合)が中盤過ぎから加速していき、真っ先にフィニッシュラインを駆け抜けた。 【写真】「えっ、腹筋どうなってんの…?バッキバキすぎ…!」“スプリント女王”君嶋愛梨沙(28歳)の長~い手足と「シックスパックどころじゃない」腹筋。圧勝劇の決勝レースの様子も…この記事の写真を見る(50枚超) ゴールタイムは11秒46(-0.5)。この種目で3連覇を達成するも、パリ五輪の参加標準記録(11秒07)には届かなかった。 「オリンピックを狙っていたので、タイムを見て『ああ、駄目だったなあ』というのが正直な気持ちです。でも4年前、このスタジアムで準決勝落ちだったことを考えれば、いま3連覇できているのは一つの成長だなと実感しています」
100mは3連覇…でも五輪の舞台は遠く
レース後、君嶋は3連覇を達成した喜びと、五輪の切符を逃した悔しさが入り混じる表情で、こう振り返った。 今や国内女子スプリンターの代表格である彼女だが、実は「日本一」の称号を手にしたのは、26歳で迎えた2022年の同大会が初めて。表彰台の一番上に立つまでには、長い紆余曲折があった。 君嶋は、桐生祥秀(日本生命)や男子200m中学記録保持者の日吉克実、女子100m高校記録保持者の土井杏南(JAL)ら中高時代から飛びぬけた実績を残す「95年世代」の一人。山口・麻里布中で陸上を始め、2年時に全中200mで24秒36の中学記録(当時)を叩き出し、一躍その名を全国に馳せた。 だが、中学卒業以降は怪我に悩み、苦難が続いた。 陸上の名門・埼玉栄高に進学したが、左脚の痛みを抱え、1年の冬に舟状骨の疲労骨折が判明。リハビリ生活は長引き、個人でインターハイに出場することすら叶わなかった。 そのブランクは大きく、進学先の日体大でも伸び悩んだ。一方、大学3年の夏からボブスレーとの二刀流に挑戦。スプリント力などが評価されトライアウトに合格し、日本代表として初出場したヨーロッパカップで優勝。世界選手権では日本男女初の7位入賞という快挙を遂げている。 陸上では怪我に苦しみ、伸び悩む一方、ボブスレーでは「JAPAN」を背負うことができる。それでも、君嶋の主軸はあくまで陸上だった。世界選手権から3カ月後、大学4年の関東インカレで中学3年以来7年ぶりの11秒台をマークして優勝。日体大大学院を経て今後の進路を考える際も、陸上を辞めるという選択肢はなかったという。 社会人1年目の2020年、同じく新潟で行われた日本選手権は11秒92(-1.3)で敗退。東京五輪の選考を兼ねた21年大会は11秒86(-1.9)で5位。そして22年、11秒36(+0.6)、日本歴代4位タイ(当時)のタイムで優勝をつかみ、オレゴン世界選手権4×100mリレーのメンバーに選出。2走を担い、11年ぶりの日本記録更新に貢献した。
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