「天才すぎる…」池松壮亮のスゴい演技が堪能できる映画(1)ブレイク前から光る才能…女を沼らせる唯一無二の境地
日本の映画界にいなくてはならない俳優の1人、池松壮亮。アンニュイな雰囲気と、捨てられた子犬のようなほっとけなさを感じさせ、過激な濡れ場や、影のある役を演じる上で右に出るものはいない。そして圧倒的な演技力で、観客のみならず、数々の映画監督をも虜にしてきた。そんな池松壮亮が出演した映画を紹介する。今回は第1回。
『紙の月』(2014)
原作:角田光代 監督:吉田大八 脚本:早船歌江子 出演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、田辺誠一、小林聡美 【作品内容】 銀行に勤める平凡な主婦、梅澤梨花(宮沢りえ)。彼女は夫との冷え切った関係に悩んでいた。ある日、営業先の家の大学生・平林光太(池松壮亮)と不倫関係になる。 梨花は、女としての喜びを与えてくれた光太の借金を肩代わりしたり、贅沢に遊んだりするが、その金は銀行から横領したものだった…。 【注目ポイント】 本作は第25回柴田錬三郎賞を受賞し話題になった、角田光代のサスペンス小説が原作。2014年に原田知世を主演に迎えテレビドラマ化し、同年に宮沢りえ主演で映画化した。 池松は、宮沢りえ演じる主人公・梅澤梨花を翻弄する大学生・平林光太を演じ、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞、第57回ブルーリボン賞助演男優賞など、数々の賞を受賞し、その実力を世間に知らしめることになった。 池松のキャスティングは、舞台『ぬるい毒』でタッグを組んだ吉田大八監督によるもの。演じるのは主人公の人生を振り回す、重要なキャラクター。それに相手は国民的女優・宮沢りえである。並みの若手俳優に務まるポジションではない。 しかし池松は、甘い声で女を魅了する弱さを見せたかと思えば、男らしさを発揮する場面もあり、異なる顔を絶妙なバランスで使い分け、重要な役を見事にこなしている。 内面に悩みを抱えつつも、良識のある主婦の心の隙間に容赦なく入り込む。光太という役は、芝居が強すぎても弱すぎても成り立たない。この時、池松壮亮はまだブレイク前だが、セリフが直截に表現している意味以外の余白を観る者に感じさせる芝居が天才的に上手く、すでに誰にも真似できない、唯一無二の境地に達している。 表面に見せている顔の奥に、「この人のことをもっと知りたい」と思わせるミステリアスさを秘め、女を沼らせる池松を見ることができる作品になっている。
編集部