就職も恋愛もうまくいかない理由。20代男性が大人になって気づいた発達障害
大学卒業後、会社をすぐに退職。発達障害の診断
――その後、どうなりましたか? 就活では面接がうまくいかず、就職できませんでした。その後1年の就職浪人を経て、とある企業の正社員になりました。でも上司と意思疎通がうまくいかず、24歳の時に退職。別の会社でアルバイトを始めましたが、そこでも人間関係に悩みました。 その時、やっと発達障害がテレビやメディアなどで取り上げられるようになり、自身の特徴にあまりにもあてはまるので、病院を受診したんです。そこでASD(自閉症スペクトラム障害)の診断を受けました。 ――その時はじめて発達障害であることを知ったのですね。 そうですね。でも僕は最初、障害を受け入れられませんでした。 ――あるテレビ番組では、発達障害の診断を受けた男性が「生きづらさの原因がわかってほっとした」と語る場面が紹介されていました。 「ほっとした」「わかってよかった」という人もいますよね。でも僕はその逆でした。母に診断結果を告げたら、ショックで泣きだしたんです。頑固な父からは世間体を気にして「周囲には言うなよ」と言われました。 それが原因で障害者手帳をとるのに苦労しました。今でも父とは折り合いが悪いままです。
恋愛セミナーへの参加やマッチングアプリをはじめるも
――その後、どうなりましたか? 当時の僕は24歳で恋愛経験ゼロ。落ち込んでばかりもいられないので、自身の障害を知った上で恋愛がしたいと思い、マッチングアプリをダウンロードしました。 ――本格的に恋活をはじめたのですね。 はい。「いいね」をもらうために、アプリ内課金をしました。そこで初めて彼女ができたのですが、数週間あまりで別れました。彼女にとって僕は、つきあっていたというより、ただの都合のよい存在だったと思います。 ――都合のよい存在とは? 女性とのつきあい方が分からなかったので、彼女が「〇〇が欲しい」と言えば、僕はそれをどんどん買っていました。彼女に嫌われたくなくて、最終的にかなりの金額を貢いでいたと思います。最終的にうまくいかなくなりました。 大学時代の数少ない友人のひとりに、自身に恋愛コンプレックスがあり、悩んでいることを打ち明けました。 ――本音を話せる友人がいたのですね。 はい。彼の存在が僕にとって支えでした。悩みを聞いた彼は「実は僕も発達障害があって、気持ちがわかるよ」と打ち明けてくれてたんです。すっかり彼を信用した僕は、彼が紹介してくれた恋愛セミナーに入りました。 ――恋愛セミナーですか? 友人に紹介された男性が主催する「モテるための極意」などを学ぶセミナーです。最初は無料でしたが、ある時、主催者の男性から「もっと学ぶためには数十万必要」だと言われたんです。 実はこれ、セミナーをかたった詐欺だったんです。それに気づいた時、僕には数百万円の借金ができていました。
取材・文/毒島サチコ