なぜビッグバンの前に「インフレーション」が起きたと物理学者は考えるのか?ビッグバン理論では解決できない4つの問題
時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。 【写真】謎の「ナノヘルツ重力波」の存在。衝撃の観測報告と「時空の歪み」の原因は? いよいよ話題は「宇宙のはじまりの姿」に迫っていきます!宇宙の始まりについては「ビッグバン理論」からそれ以前に起こったとされる「インフレーション宇宙モデル」が提唱されました。実は、ビッグバン理論にはいくつかの大きな問題が存在します。この記事では「ビッグバン理論」の問題点について見ていくことにします。 *本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
ビッグバン理論の大きな問題点
宇宙のインフレーションを説明する理論模型(学説)が特定されていない段階にもかかわらず、研究者たちはなぜインフレーションを信じているのでしょうか。 それは、ビッグバン理論には大きな問題点がいくつか存在し、宇宙のインフレーションがそれを解決する方法を提供してくれるからです。 まず、その大きな問題点について順に説明します。
(1)地平線問題
地球に住んでいる我々にとって、高い建物や高い山に登っても、地球が丸いため、地球の裏側を直接見ることはできません。 実は、宇宙が誕生してから有限時間しか経過していないため、我々が宇宙の全体を見ることは不可能なのです。有限時間内では、光は有限の距離しか到達できないからです。この限界を「地平線」とよびます。もちろん、日常生活で用いる地平線とは異なる意味ですが、そこからの転用です。 宇宙の地平線が存在する理由は、光速が物質の速度の上限だからです。地球を例にしてみましょう。地上の観測者から見て、東の果ての地平線と西の果ての地平線を比べてみます。たとえば、高知市の人にとって、南の果ては太平洋の水平線であり、北の果ては陸地である四国山地です。 宇宙の場合、どの方向の見え方もほとんど同じなのです。現在のところ、宇宙の最遠方から来る情報は、宇宙マイクロ波背景放射です。