共働き世帯へ専門家が回答! 20代・30代がやるなら「iDeCoと新NISA、どちらを選ぶべき?」
iDeCoの2つの注意点
ただしiDeCoは決してメリットばかりではなく、注意点も以下の2つがあります。 (1)原則、60歳まで引き出せない(資金ロック) (2)運用後の受け取り方法で税金が変わる まずiDeCoは年金制度のため、原則60歳になるまで年金資産(掛金と運用益)を引き出すことはできません。これを資金ロックと言いますが、仮にiDeCoを始めた後に子どもが生まれて、教育資金や住宅購入資金などでお金が必要になったとしても、iDeCoで運用しているお金を途中解約することはできません。 このようにiDeCoはライフステージの変化による支出に対応できない点はじゅうぶん気を付ける必要があり、将来の資産設計をきちんと行った上で始めることが大切です。そのため、60歳までの大きな支出に備えることも視野に入れるなら、いつでも引き出せる新NISAを利用するのがいいでしょう。 またiDeCoは受け取る方法で、税金が変わるので注意が必要です。iDeCoは運用益が非課税で掛金も所得控除になりますが、60歳以降に年金資産を受け取る際、税金がかかる仕組みとなっています。しかも、運用益だけでなく、掛金を合わせた年金資産全体が課税対象となります。この受け取り時の課税はやや複雑で、受け取り方によって税金の計算方法が異なります。 iDeCoは一時金として一括で受け取るか、年金として分割で受け取るか、もしくは金融機関によっては一時金と年金の併用で受け取るかを選択できます。一時金として受け取る場合は退職所得となり、退職所得控除によって税金負担は軽減されます。もしくは年金として受け取る場合は雑所得となり、公的年金等控除によって税金負担は軽減されます。 特に一時金で受け取る場合の退職所得控除は、かなり手厚い優遇となるのでおすすめです。 退職所得は、「退職所得=(退職収入-退職所得控除額)×1/2」で計算されますが、退職所得控除額は勤続年数によって計算されます。勤続年数が20年以下の場合、退職所得控除額は「40万円×勤続年数」となり、勤続年数が20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」にて算出されます。 iDeCoにおける勤続年数とは、掛金を出して積立した期間だと思えばOKなので、たとえばiDeCoで30年間積立をしたら、1500万円が退職所得控除となります。つまり受け取り時に、手元に入るiDeCoの掛金と運用益の合計の1500万円までは税金がかからず、人によってはまるまる非課税で受け取ることができます。また退職所得控除を超える分についても、課税されるのは1/2、つまり半分だけとなります。 このようにiDeCoの出口戦略としては、退職所得と同じ扱いになる一時金で受け取る選択肢を考えておくといいでしょう。 ただし退職所得には会社から支給される退職金なども含まれ、iDeCoの一時金と会社の退職金の受け取り時期が重なってしまうと、退職所得控除をそれぞれに適用できず合算されてしまいます。この対策としては、会社からの退職金とiDeCoの一時金の受け取り時期を、一定期間空けるのがいいでしょう。 会社からの退職金を受け取る場合、前年以前の4年以内に受け取った一時金は合算して考えますが、それよりも前の一時金は考慮しません。たとえばiDeCoの一時金を60歳、会社からの退職金を65歳で受け取るなど5年以上空けた際は、それぞれの受け取りにおいて退職所得控除をフル活用できて大変お得になります。 またiDeCoの一時金を受け取る場合は、前年以前の19年以内に受け取った退職金は合算して考えますが、それよりも前の退職金は考慮しません。そのため、会社の退職金とiDeCoの一時金、どちらを先に受け取るかも含めて、自分にとって最適な受け取り方を考えていきましょう。