【ビッグモーター問題の「その後」】捜査の手は本丸・兼重宏一前副社長(創業者長男)まで届くのか
「本部からは、彼の逮捕翌日に和泉伸二社長から一斉メールで連絡がありました。現場では『やっぱりか』といった感じです。悪い噂をよく聞いていた人なので。ただ、2日後に社員が2人、書類送検されたことは驚きました。今ごろ工場長や店長経験者は、次は我が身と震えているんじゃないでしょうか」 【内部画像】おろそしい…! 店舗を視察する兼重宏一前副社長「腕組み&仁王立ち」の威圧感 こう語るのはビッグモーターの関東地方の店舗に勤める30代社員だ。 1月30日、神奈川県警は器物損壊の疑いでビッグモーター社員の蒲原(かもはら)敏之容疑者(51)を逮捕した。蒲原容疑者には’22年10月、店舗の整備や清掃状態をチェックする環境整備の一環として、川崎店前の街路樹6本を伐採した疑いが持たれている。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が解説する。 境整備で中心的な存在だった『環境整備推進委員』という役職についていました。短期間ながら取締役も務めた人物で、重用していたのは兼重宏一前副社長(35)。蒲原氏は″環境整備の鬼″などと呼ばれ、お客さんの前で社員を怒鳴るなどはザラ。なかには父親が危篤なのに帰宅を認められず、親の死に目に会えなかった方もいました。パワハラ気質は、社内でも有名だったようです」 実際に、蒲原容疑者から街路樹を枯らすよう指示を受けた社員は多い。 現在は本社に勤務する40代幹部は「店長時代にかなり詰められましたよ。除草剤の使用についても、市役所に確認すべきだと進言しましたが、却下されました」と語る。また関西地方の店舗に勤める社員は「街路樹を抜いたり、枯らしたりするよう指示を受けた」と明かした。 街路樹問題を巡っては全国20都道府県の自治体などから51件の被害届が出されている。また今回の1件も含め、12件の刑事告訴も受理されている。そのため、逮捕者は今後も相次ぐと見られている。前出の加藤氏が続ける。 「今後も書類送検される社員は増えるでしょう。逮捕者となると、保険金不正請求で中心的な存在だった板金部門の責任者は、何度も取り調べを受けていると聞きます。そして当局の最終的な狙いは、やはり現場のトップだった宏一前副社長の逮捕でしょう」 しかし、逮捕までの道のりは平坦ではない。神奈川県警の捜査関係者が言う。 「街路樹問題は刑事告訴されており、保険金水増し請求などのほかの不正に比べれば立件しやすい。突き崩すにあたり、カギを握るのは蒲原容疑者の証言。街路樹問題における宏一前副社長の関与の実態をどこまで引き出せるかが、取り調べのポイントの一つです」 蒲原容疑者の逮捕は、すでに昨年12月頭には噂が出回っていたという。そういった事情もあってか、ビッグモーターからは退職者が相次いでいる。加藤氏によると昨年12月~今年1月にかけて320人以上が会社を去ったという。 さらに店舗の閉鎖も増えている。一時は全国に300近くがあった店舗は、250ヵ所を切るまで減少。さらに全国でも屈指の規模を誇る東京・多摩店では板金工場を閉鎖するなど、不動産の整理に必死だ。 その裏には、大詰めを迎える伊藤忠商事のデューディリジェンス(資産算定)がある。資金援助を受けるための重要な審査の期日が今春に迫るなか、今回の逮捕は悪影響を与える……かと思いきや、むしろメリットになり得るという。 「支援に向け、伊藤忠が出した条件の一つが『創業家との断絶』です。今回の捜査が宏一前副社長に及べば、その条件に近づきます。体質改善へ向け、ビッグモーター側も捜査へ全面的に協力すると表明しています。だからこそ私は、宏一前副社長が逮捕される″Xデー″は意外に遠くないと考えます」(加藤氏) 経営再建を果たすために、膿(うみ)をすべて出し切れるか。 『FRIDAY』2024年2月23日号より
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