「うそ信じた自分を恥じた」脱原発に転じた小泉純一郎元首相
小泉純一郎元首相が7日、東京の外国特派員協会で記者会見した。小泉氏は、2011年の福島第一原発事故をきっかけに、「脱原発・原発ゼロ」を訴え続けている。 【中継録画】小泉純一郎元首相が会見 トモダチ基金を7月に創設 この日の会見は、東日本大震災の「トモダチ作戦」に参加して被ばくしたという米兵らを支援する基金についてがメインだったが、脱原発についても言及。「原発は安全」などのスローガンは「全部うそだと分かった」、日本はいま「原発ゼロ」状態だが「それでも停電はない」などと持論を展開した。1時間半の予定だった会見は2時間に及んだ。
わずかでも感謝の気持ちを
今年74歳を迎えた小泉氏は「最近は言おうとしたことを忘れる」と会場を笑わせながら語り始めた。まず7月に創設した「トモダチ作戦被害者支援基金」について切り出した。 東日本大震災の救助や復興を支援した米軍の「トモダチ作戦」に参加した元米兵らは、同原発事故で被ばくしたとして東京電力を相手取り約400人が集団訴訟を起こしている。小泉氏は5月に米国を訪問し、彼らからじかに話を聞いた。がんや白血病に苦しむケースもあり、すでに7人が死亡したという。 日本のために働いてくれた彼らに報いるために「わずかでも感謝の気持ちを表したい」と思い、少しでも治療に役立ててもらえればと基金を立ち上げたのだという。現在、4000万円近く集まったといい、来年3月までには「なんとか1億円近く集めたい」と協力を呼びかけた。
専門家を信じていた
そして、「語りたいことはたくさんある」という脱原発について、持論を展開した。 小泉氏は、首相時代には推進していた原発を、なぜ今になって否定するのか。それについて、小泉氏は「専門家の意見を信じていた」と説明した。 「原発は安全」「コストが一番安い」「CO2を出さないクリーンエネルギー」。原発のメリットとして専門家はこの3つを唱え、小泉氏も「文明生活を送るにはこれからも原発が必要だと信じていた」という。 しかし原発事故によるメルトダウンを目の当たりにして、原発導入の経緯や実情などについて自分で勉強し直していくと、専門家が言っていた3つの主張は「全部うそだと分かった」。小泉氏は「よくもこんなうそを信じていたと自分を恥じた」と振り返り、「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」という思いから原発ゼロの活動を始めたのだと語った。 専門家らは飛行機や自動車を例に挙げ、「機械に絶対安全なんかない。技術はそのリスクと恩恵を勘案しながら発展してきた」と説明するという。しかし、小泉氏は「飛行機や自動車など違い、原発はひとたび事故が起これば桁外れに大きな被害をもたらす」と訴えた。