シーズン7勝のスコッティ・シェフラー 強さに磨きをかけたのは「家族」の存在
PGAツアープレーオフシリーズの最終戦「ツアーチャンピオンシップ」が、イーストレイクゴルフクラブで開催され、アドバンテージを持ってスタートしたスコッティ・シェフラーがコリン・モリカワ、サヒス・スィガーラらを振り切り、優勝。年間チャンピオンに輝きました。また前週で途中棄権していた松山英樹選手は、最終的には9位タイに終わったものの、4日間元気な姿を見せてくれました。世界が注目した激戦の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めたプロコーチの内藤雄士さんに振り返ってもらいました。
ハイレベルなPGAツアーで圧倒的な強さを見せたシェフラー
終わってみれば、スコッティ・シェフラーの完勝でした。最終日まさかのシャンクもあって、7、8番で連続ボギーを叩き、コリン・モリカワと2打差になったときは、「もしかして」とも思ったのですが、モリカワが9番の長いパー3のティーショットをミス。逆にシェフラーがピッタリつけてバーディーを奪い、差は縮まらず。ここが一つの分岐点になったような気がします。 その後、シェフラーは9~11番まで3連続バーディー。おそらく11番のバーディーで、勝利を確信したのではないでしょうか。それ以降は、安全なプレーに徹していました。14番パー5ではイーグルを取ったものの、15番以降は、バーディーを狙えるパットも、入れるというよりは距離を合わにいっていたような気がします。 それにしても、今年のシェフラーは強かった。まさに圧巻の1年だったといえるでしょう。タイガー・ウッズの1999年や2000年、2007年を彷彿とさせるような強さでした。「マスターズ」を勝ち、「ザ・プレイヤーズチャンピオンシップ」も制し、「パリ五輪」でも金メダルを取って、「ツアーチャンピオンシップ」も勝利。シグネチャーイベントでも他を圧倒した試合が多く、とんでもない強さだったと思います。 ツアーのレベルが全体的に上がっている中で、シェフラーのように飛び抜けた存在が出てくるというのは本当に考えられないことです。強さの秘密に関しては、ひと言で言い表せませんが、今季に関してはメンタル面での充実もあったように思います。 特に、奥様、お子さんの存在が大きかったのでしょう。優勝スピーチでも、必ず奥様への感謝を口にしていましたが、家族の支えが精神面の充実につながっていたような気がします。ある意味、家族で戦っていたのかもしれません。稼いだお金も相当な額になったと思います。先日、丸山茂樹プロともその話題になったのですが、丸山プロがPGAツアーで戦っていたときも“高額”というイメージがあったのですが、当時とは桁がちがいますからね。 そういう意味では、今のゴルフ界は夢がある。もちろんお金だけではないと思いますが、大谷翔平選手を目指して多くの球児が頑張っているように、ゴルフ界でも、若い選手はもちろん、ジュニアゴルファーたちのモチベーションアップにつながるはず。ゴルフ界に携わるものとしても、今後がますます楽しみになってきました。 夢を与えるといえば、松山英樹選手も大いに奮闘してくれました。今季はランキング9位ということで、自己最高には届かなかった(最高位は8位)わけですが、見事なシーズンだったと思います。「ザ・ジェネシスインビテーショナル」と、「フェデックスセントジュードチャンピオンシップ」で勝利し、「BMWチャンピオンシップ」の棄権で少し心配しましたが、「ツアーチャンピオンシップ」では、4日間元気にプレーをしてくれました。今週はパッティングが決まらなかったことで、優勝争いに絡めなかったわけですが、ショットのクオリティーは高かったと思います。 この大会をもってレギュラーシーズンは終わりましたが、今年は「プレジデンツカップ」が控えています。出場メンバーを見る限り、シェフラー、モリカワを揃えたアメリカが強過ぎる感じもしますが、インターナショナルチームも負けてはいない。松山選手は期待できるし、アダム・スコットも好調をキープしている。また、「プレジデンツカップ」の場合は、マッチプレーなので、やってみないと分からない部分もあります。 選手たちの気持ちも、自分のために戦っているときとはまったく違ったものになるので、何が起きるか分からない。間違いなく面白い戦いになるはずなので、ぜひ初日から見ていただきたいと思います。