花王の新マジックリンが“泡売れ” ブラシ不要、トイレ掃除が楽に
トイレブラシがいらなくなる――。2023年10月の発売直後から話題を呼び、売れに売れている「トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック」。24年5月中旬時点で累計出荷数が857万本を超えた。同商品発売後、トイレクリーナーの市場規模は前年比116.3%となり、このカテゴリーそのものを大きく活性化(インテージSRI+、金額ベース、23年10月~24年4月の実績)。それは多くの消費者に敬遠されているトイレ掃除を一変させたからだ。 【関連画像】便器に噴射すると、泡がもこもこと膨らむ。吸着性が強く、たれにくい 今までの便器掃除は、手袋をはめた後、トイレ掃除用の洗剤をかけて、専用ブラシでこするのが一般的だった。このやり方は時間がかかるだけでなく、専用ブラシから飛沫が飛んだり、定期的に専用ブラシを洗浄したりする必要があるため、抵抗を持つ人は少なくない。 トイレブラシを使いたくない……。そんな消費者の悩みに応えたのが「トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック」だ。 1978年に誕生したトイレマジックリンシリーズにおいて、「こすらない」とうたった商品は今回が初めてだ。 トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パックは、汚れが気になる部分を中心にスプレーをかけて使う。15プッシュほどで、便器全体を泡でカバーできる。あとは、「もこもこした」泡を5分放置して水を流せば終了だ。その5分間で便器の蓋や床などの拭き掃除を済ませれば、トイレ掃除全体を時短できる。 また、泡にはコーティング剤が含まれているため、洗い流した後でもつやは続く。その後、黄ばみや黒ずみ、尿石といった汚れが付着するのを防ぐ効果もあり、全体としてトイレ掃除がかなり楽になる。 容量は300mlで約300プッシュ分。1回15プッシュ、それを週2回の頻度で掃除した場合、2カ月程度使用できる計算だ。
逆さにしても大丈夫
爆発的に売れている要因は3つある。 1つ目は何といっても、さっとスプレーするだけで嫌なトイレ掃除が終わる点。トイレブラシは不要になる。花王ホームケア事業部の竹川真魚氏はスプレーの泡について、「つけて流すだけで、便器内の汚れを落とせるような洗浄性と吸着性を実現した」と説明。約2000パターンの試作品から、さらに選んだ100パターンを関係者が実際に使用。そして「これだ!」と思う泡に絞り込み、商品化にこぎ着けた。 その成果が実り、今までのマジックリンシリーズにはない新たな吸着持続成分を持つ泡の開発に成功した。研究・開発に費やした時間は、これまで手掛けてきた商品の中でも特に長い。 竹川氏は流通関係者にこの商品をプレゼンする際、スプレーしたお盆を裏返した状態で頭上に掲げ、「逆さにしても泡が落ちにくいこと」をアピール。このパフォーマンスが注目を集めたことも、取扱店舗の拡大につながった。 トイレ掃除が簡単になった分、頻度が増え、その結果リピート購入率が上がったこともヒットにつながっているという。 消費者からは「普段はトイレを掃除しない家族が『これなら簡単そう』と言って手伝うようになった」「もこもこの泡ができる様子が楽しいと子どもが喜んでいる」といった声が寄せられている。 2つ目のヒット要因が、「明快な商品名と、目を引くパッケージデザイン」だ。特徴を「こすらずスッキリ泡パック」という商品名に落とし込み、その泡を全面的にアピールしたシンプルなデザインに。そうしたアプローチが、トイレ掃除に不満を覚える消費者の心にうまく刺さった。なお、トリガー部分は泡をイメージして丸みを持たせるため、新規で造ったという。 容器の色と洗剤の香りを空間になじむようにした点も、ヒット要因だ。 「消費者からはトイレ掃除用品を目につくところに置きたくないという声をよく聞くが、棚にしまうと結果的に取り出すのがおっくうになり、掃除頻度が下がる。そこで発想を変えて、全体をおしゃれな“くすみカラー”にすることで空間になじむようにした」(竹川氏)。香りも、トイレ用洗剤であまり使われないルームフレグランス系を選んだ。 発売以降、社内の予想を大きく超える売れ行きを見せており、「この好調の流れを受け、今後の展開にも力を入れていく」という。
橋本 岬