EV推進派の裏切り? 米ニュージャージー州が導入する「EV道路税」が矛盾と不条理に満ちているワケ
EV推進州の意外行動
米国のニュージャージー州は、「ガーデンステート」とも呼ばれ、豊かな自然環境で知られている。同州は2023年、「チャージ・アップ・ニュージャージー」と呼ばれる電気自動車(EV)購入促進プログラムを導入。EV1台につき最大4000ドルの購入補助を開始した。 【画像】「ニュージャージー州」を見る(計15枚) 米国でいち早くEV補助金の支給を開始し、2023年11月には2035年までにガソリン車の販売を廃止することを公約に掲げ、全米50州のなかで 「EV推進州」 に認定された。そんなニュージャージー州のフィル・マーフィー州知事が2024年3月末、新たに 「EV道路税」 を導入する法案に署名し、物議を醸している。EV推進で知られるニュージャージー州が、なぜEV販売にブレーキをかけるような道路税を課すのか。理解に苦しむとの批判もあるこの税金の詳細を深掘りしてみた。
年間250ドルの道路税
マーフィー州知事が署名した「EV道路税」が2024年7月から施行され、州内に居住するEV所有者は年間250ドル(約3万9000円)の道路税を支払わなければならなくなる(2028年までの4年間、毎年10ドルの追加を含む)。 さらに、EVの新規購入者またはリース契約者は、2028年までの4年間、一括して道路税を前払いし、新車納車時に1060ドルを支払う義務がある。EVの購入が進まない理由のひとつとして、EVの高価格が挙げられており、1000ドル近い新規出費につながり、EV販売を抑止しかねない状況だ。 ニュージャージー州在住のEV所有者に対する新たな道路税の目的は、同州の燃料税(ガソリン税)収入の損失を相殺するためとされているが、道路損傷の修復費用を回収する目的もある。 その根拠は、EVは一般的にガソリン車より重い傾向にあり、将来EVが普及すれば道路損傷が増える可能性があるというものだ。しかし、そのような根拠は理にかなっているのだろうか。同州上院予算歳出委員会に反対意見書を提出したNPO団体「チャージEVC」の指摘を検証したところ、腑に落ちない点が多いことがわかった。