処理水監視参加が〝条件〟中国、日本産水産物の輸入再開表明へ 習政権の「日本たたき」破綻も「新たな言いがかり与えるリスク」
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受け、日本産水産物の輸入禁止を続けてきた中国が一転、輸入再開を表明する見通しとなった。ただ、〝条件〟として、中国も参加できる形で処理水のモニタリング(監視)体制を強化する方針が浮上している。科学的根拠に基づかずに処理水を「核汚染水」と主張してきた中国の参加は、新たな言いがかり材料を与えかねないという懸念の声も出ている。 【グラフィックで見る】日中韓のトリチウム年間排出量 岸田文雄首相とIAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長は20日、電話会談を行って監視体制を強化することで合意する。 日本は現在、IAEAの指揮の下、第三国の専門家も参加し、各国の分析機関で結果を比較する体制を構築している。これに対し、中国は7月の日中外相会談などで、「独立した試料採取」や「長期的な国際監視体制の構築」を求めてきた。 外交筋によると、今後は試料の採取ポイントを増やすほか、中国を含む希望する第三国の役割を拡充し、海水や、水産物などの試料採取に加わるようにする。政府は中国とも並行して協議しており、新たな体制を踏まえ、日本産水産物の輸入を着実に再開させると表明する見込みという。 中国は昨年8月の処理水放出開始を「核汚染水の放出強行」と非難し、日本産水産物の輸入を全面停止した。日本は科学的根拠に基づかない措置だと主張し、即時撤廃を求めてきたが、中国側は今月16日のIAEA総会でも「汚染水」と呼び、放出反対を訴えていた。 中国の理不尽な「禁輸措置」に対し、日本政府は水産物の販路拡大を進めてきた。農水省は欧州や南米など各国でPRイベントを開催するなど売り込みを本格化させている。中国に依存しない形での市場開拓が進むなかで、今回の動きをどうみるか。 ■石平氏「中国の『日本たたき』破綻」 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「国際社会が中国の『汚染水キャンペーン』に同調しなかったため、習近平政権は、こぶしを下ろさざるを得なくなったのだろう。中国の『日本たたき』が破綻したことを示しているのではないか」と話す。 日本産水産物の輸入再開表明の前提となる、処理水の監視態勢強化に懸念を示す意見もある。