直木賞に河崎秋子さん「掘り出したい物語まだまだ」 地元・北海道農業関係者も沸く
人と熊の闘い「五感で感じて」描写
山中で狩猟を続ける孤高の男と冬眠を逃した凶暴な熊の闘いを描いた小説「ともぐい」(新潮社)が第170回直木賞を受賞し、著者で北海道の酪農家出身の河崎秋子さん(44)は受賞発表後の記者会見で「酪農の経験が生きた」と振り返った。出身地の別海町の親族や地元JAの組合長からも喜びの声が上がる。 受賞作「ともぐい」には、河崎さんが道東の別海町で酪農業やメン羊飼育をしていた経験が生きたという。17日夜、東京都内で会見に臨んだ河崎さんは、熊に近い環境での暮らしから「梅雨の寒さや熊が出そうな場所の感覚を五感で感じ取っていたところはある」と回顧。その自身の経験を、先人の残された文章や言葉と結び付けて熊の狩猟などを描写したという。 「まだまだ北海道で調べたいこと、掘り出したい物語がある」と今後も北海道での創作活動の意欲を見せた。 今回の作品が、人と熊の物語を描く「熊文学」と表現されることについて「熊と闘うこと、熊のいる所で生き続けること、抗うこと。その全てを表して、熊文学と捉えてもらっても構わない」と話した。
■河崎さんの兄で、別海町で酪農を営む淳さん(53) 直木賞の候補者は、そうそうたる顔ぶれがそろっており、発表までは自分のことのように緊張した。今は驚きとうれしさでいっぱい。本当におめでたい気持ち。酪農の経験も生きている作品が受賞したこともうれしい。 ■JA道東あさひ(北海道)の浦山宏一組合長 河崎さんは地元出身で組合員の娘さんでもあり、本当にめでたいニュース。以前は別海町で羊飼いと執筆活動の両立にも励んでおり、熱心で素晴らしい姿勢の持ち主。生まれ育った環境が小説の作風に生かされていたらうれしい。
日本農業新聞