NHK朝ドラ「虎に翼」に中島みゆきを感じる理由 「女性活躍物語」よりも「弱者の物語」を
朝からヘビーでもストレートもいい。そんな『ファイト!』のような世界を突き付ける朝ドラになってほしいと期待する。ちなみに伊藤沙莉は、こうも述べていた。 ――でも考えてみれば、昔から続いていた価値観が一瞬で変わるなんて絶対なくて、多くの女性が「それはおかしい!」と声を上げて闘い続けてくれたからこそ、今の自分も「おかしい!」と気付くことができるんだと思います。それがどれだけありがたいことか(前掲書) ■主題歌の歌詞に出てくる「100年先」
しかし主題歌は、中島みゆきではなく米津玄師『さよーならまたいつか!』だ(こちらもいい曲)。歌詞には「100年先」が何度も出てくる――「♪さよなら100年先でまた会いましょう」「♪100年先も憶えているかな」「♪100年先のあなたに会いたい」。 モデルの三淵嘉子が生まれたのは1914年。100年以上も前の話だ。100年以上も先の日本は、「女性活躍社会」の言葉が空虚に響き渡り、「選択的夫婦別姓」(「選択的」なのだから、さっさと導入すればいいと個人的には思っている)すらもなかなか進まない。
「弱者」としての女性を描くドラマが、100年以上先の社会で、まだまだ突出したリアリティを持つことを、果たして三淵嘉子は想像しただろうか。
スージー鈴木 :評論家