「資本主義」を超えろ…! 「お金を稼がなくても生きていける」という「贈与経済2.0」の“すごすぎる正体”
「お金を稼がなくても生きていける世界はつくれるのか?」――。こんな資本主義経済の“急所”をつく大胆な問いに果敢に挑むプロジェクトがある。「ハートランドプロジェクト」と呼ばれるものがそれで、「哲学×ブロックチェーン」で贈与経済をアップデートしようとする試みだ。 【写真】これから給料が「上がる会社」「下がる会社」全一覧…! 発起人は慶応義塾大学文学部教授の荒谷大輔氏。哲学・倫理学の専門ながら、机上の空論では終わらせずに、ITエンジニアやプロジェクトマネージャーなどさまざまな専門家を巻き込みながら社会実装を進めている。 実は今春から、東京・高円寺と石川・白峰の2拠点でトヨタ財団の支援を受けた「贈与経済2.0」の実証実験が始まる。前回、前々回の記事では「贈与経済2.0」の仕組みを見てきたが、では、「お金を稼がなくても生きていける世界」では実際に人々にはどんな変化が起きるのか――。荒谷氏の著書『贈与経済2.0』(翔泳社)から紹介しよう。
資本主義経済における「懲罰」と「安心」
資本主義経済において一元化される「道徳」が、必ずしも「安心」できるものではないという点も見ておく必要があるでしょう。 例えば私たちがスーパーマーケットの棚に陳列された商品の質について「安心」できるのは、なぜでしょうか。聞いたことのないブランドのものであっても競争の激しいスーパーの棚に置かれているということは、それに値するものだと見なされます。 実際に確かめる前でもその商品が自由競争の結果、勝ち残ったものであるということで一定の「安心」を得ることができるのです。 もちろん、それが裏切られた場合にはスーパーにクレームを入れるなどの行動をとることができるでしょう。あえて自分でやらなくても多くの客が行き交うスーパーで誰かがクレームを入れられるという状態が「安心」を支えているわけです。 つまりは、私たちは資本主義経済における「懲罰」の働きを知っているので、あらかじめルールが守られていることを期待できるのでした。 しかし、そうした資本主義経済の「道徳」の内容が、いつでも手放しに「正しい」わけではありません。