「どんどんどんどん悪くなってしまった」藤井聡太名人 初防衛はお預け 痛恨敗戦でカド番叡王戦にも影響
将棋の藤井聡太名人(21)=竜王、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖と合わせ八冠=に豊島将之九段(34)が挑戦している第82期名人戦七番勝負第4局が19日、大分・別府市「割烹旅館もみや」で前日から指し継がれた。後手の藤井が豊島に95手で敗れ、ストレートでの名人初防衛とはならず。シリーズ成績は藤井の3勝1敗となった。第5局は26、27日、北海道・紋別市「ホテルオホーツクパレス」で指される。 目の前に座る豊島の勝利者インタビューが始まっても、藤井は目を時折強くつむり、悔しさを隠そうとしなかった。敗因に挙げたのは、中盤に自陣の銀を上がり、相手の攻めを受けようとした手。「そこからどんどんどんどん悪くなってしまったので、前後の手順で工夫が必要だった」。そう話す顔には、明らかな疲労と苦しさが張り付いていた。 戦型は、豊島が3手目に端歩を突く一手を入れたことで、通常とは先後を入れ替えた形での横歩取りに。序盤から互いに大駒が行き交う華のある展開だったが「進んでみると、こちらの玉形がかなり乱れていて全く自信がない気がした。判断が甘かった」。初日の時点で、既に反省する局面になっていたという。 豊島やや有利で迎えた2日目は「受けに回っても受け切れない気がした」と攻め合いを選択。「無理気味なんだろうな」と思いつつ指し手を進めた。藤井が自陣に手を入れる辛抱の手を指すと、一時は「すぐに負ける形ではなくなった」と難解な中盤戦に突入したが、自信を持って最善手を指し続けたのは豊島。持ち味であるはずの終盤に手が乱れた藤井は、静かにがっくりと肩を落とした。 藤井が初めて先にカド番に追い込まれている伊藤匠七段(21)との叡王戦五番勝負第4局は31日、千葉・柏市で指される。ストレート決着できれば日程にやや余裕ができていたが、それはかなわず。第5局の4日後に大一番を迎えるという過密日程を余儀なくされることとなった。 23年度は勝率8割5分2厘という驚異の数字を残したが、今年度はここまで4勝3敗の勝率5割7分1厘。苦戦気味の中、第5局をきっちり勝ち切り、名人初防衛を決めていい流れをつかみたいところだ。「またすぐに(対局が)あるので、気持ちを切り替えて頑張りたいと思います」と話すと、藤井はまた静かに目を閉じた。(瀬戸 花音)
報知新聞社