パリ五輪「セーヌ川は汚濁していなかった」が…大会運営側の不備で選手が損害を負ったら主催者に責任を問える?
東京2020で「体調不良の報告はなかった」
ワールドトライアスロンの厳格な基準は、3年前の東京オリンピック・パラリンピックでも適用された。 東京都の担当者は、「お台場海浜公園の水質対策として、(東京2020)組織委員会が三重の水中スクリーンの設置や、競技水域の水温を下げることができる水流発生装置を導入しました。その結果、トライアスロン(スイム)、マラソンスイミングともに、IF(国際競技連盟)の基準を達成する水質を確保し、大会は問題なく終了しました」と振り返る。 「会場の水質等を原因とした体調不良があったという報告は受けておりません」(同担当者)
運営側に不備あれば「安全配慮義務違反」問われる可能性も
厳格な基準のもとで運営されている競技大会。しかしそれでも、運営側の不備による事故等が起こらないとは限らない。過去には、マラソン大会で運営車両が選手と接触するという事案も生じている。 万が一、主催者の運営の不備等により選手が負傷するなど損害を被った場合、どのような責任が生じるのか。 たとえば、水質が疑問視される大阪・道頓堀川で大会等が行われ、体調不良者が出た場合、主催者にはどのような責任が問われるのだろうか。 自らもマラソンやトライアスロンの競技歴がある日向一仁弁護士は次のように説明する。 「仮に、日本において、(会場となる河川等で)基準値を上回る汚染があり、主催者がそれを把握していながら大会を強行し、それにより選手が体調不良等になった場合には、選手に対する安全配慮義務違反があったとして、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。 また、なかなか想定はしにくいですが、選手が重症化したり、亡くなったりする等の重大な事案であれば、業務上過失致死傷等という刑事責任を問われる場合もあり得ます」。 トライアスロンのバイクやラン、マラソンなど公道で行われる場合、路面上に不備があるかもしれない。 これについても日向弁護士は、「主催者が、危険な路面があることを把握しつつ、補修せずに放置したり、危険箇所を選手に周知せず注意喚起を怠ることで、選手に事故が起これば、安全配慮義務違反として損害賠償責任を負う場合があり得ます」と話す。 「ただし、競技を行う選手にも、競技者として路面状況などを把握する注意義務があると考えられますので、多少のでこぼこでけがをした程度では、主催者の責任を問うことは難しいでしょう」(日向弁護士)