東京女子・渡辺未詩 アイドル志望から団体トップの王者に!SKE48荒井優希との共通点とは?
【WEEKEND女子プロレス♯15】
アイドル志望の女の子がアイドルグループのオーディションに合格し、夢をかなえるきっかけを作った。さらにその先、女の子はプロレスラーとしてもデビューし、アイドルとプロレスの二刀流で活動。いまでは団体最高峰のチャンピオンベルトを巻いている。思い描いていた夢の通りではないけれど、ちょっと変わったシンデレラストーリーを体現しているのが、東京女子プロレスの渡辺未詩である。 【動画】渡辺未詩の凄すぎるジャイアント・スイング 渡辺は小さな頃から同性のアイドルが好きで、AKB48をはじめとする数々のグループにあこがれた。その中のひとつにアップアップガールズ(仮)があり、アップアップガールズ(プロレス)というプロジェクトの立ち上げを知りオーディションに応募した。当時は、「(プロレス)」の部分が何を意味するのかほぼわからない状態で、数あるオーディションのひとつとして応募したにすぎなかった。 しかし、そこを見事勝ち抜き、唄って踊って、そして闘えるアイドル&プロレスラーとしてのデビューが決定。プロレスを知ったのは事実上そこからで、アイドルのレッスンとプロレスの練習を重ねていく。そして2018年1月4日の後楽園ホール大会で、メンバー4人がいっせいにデビューを果たしたのである。 メンバーの中でも、渡辺はプロレスセンスが突出していた。それは自分でも気づかなかったナチュラルなパワーが基になっている。学生時代はソフトボールで外野を守っていたというが、彼女自身、「力持ち」との自覚はなかった。そこに気づいたのはプロレスのトレーニングを始めてから。他人よりも重いウェートを軽々と持ち上げていたことで、プロレス技に活かせるような指導を受けていく。その代表格が、ふたりまとめてぶん回すジャイアントスイングと言っていいだろう。 渡辺が東京女子の最高峰王座、プリンセス・オブ・プリンセス王座に到達したのは、デビューから6年3カ月後の今年3・31両国国技館大会だった。東京女子では2度目の開催で、渡辺には初の両国メインイベント。相手は前回の両国もメインで闘った絶対王者、山下実優である。 「あのときは人生最大に緊張していましたね。あとからバックステージの映像を見ると自分でも信じられないくらい緊張した表情で、ビックリしました。その日を迎えるまで、すごく大切な大会のメインだと自分に言い聞かせてきましたし、自分の緊張以上に大会全体を背負う責任ってこんなに重みがあるんだなと、すごく感じていたんです。入場待ちのとき、山下さんはどうなんだろうって想像してみたんですね。東京女子を引っ張ってきた山下さんって、いまの私の緊張をいっぱい味わってきたんだと思うと、『山下実優やべえ!』って感じました。そう思うと余計に緊張して、あせってしまって。ただ、入場曲がかかってからは、曲がポップなせいもあって緊張がほぐれましたね。また、お客さんの声援も聞こえて、やってやるぞとの気持ちにもなれました」 そして勝ち取ったプリプリのベルト。3年ぶり2度目の挑戦で、ついに頂点に立ってみせたのである。 「勝った瞬間は率直にうれしかったです。でも、うれしかっただけではない。勝てた!やった!(試合が)終わった!みたいなホッとした感情から、ベルトを受け取った瞬間にいろいろな重み、つまり、これから東京女子を自分が引っ張っていかないといけない。そういう重みがドシンと来ましたね。なので、自分のために喜んだ瞬間はそんなになかったです」 彼女にとって、プリプリ王座は2つ目のシングルタイトルである。22年10月にインターナショナル・プリンセス王座を奪取し、3度の防衛をやってのけた。が、今回は団体最高峰のベルトとあって、あのときとはだいぶ心境が異なるという。 「インターは初めての(シングル)ベルトで素直にうれしかったし、手放したとき寂しくてしょうがなかった。これは自分のものという気持ちがけっこう芽生えてきていたんです。それがプリプリのベルトになって、私が東京女子のトップをちゃんと走らなきゃいけない。そんな重みを感じています。インターって持ってる人の色が出るベルト、自分の色に染めていくベルトで、いい意味で自由度が高い。でもプリプリの場合、ビッグマッチのメインとなるので、東京女子の強さにもこだわらないといけないし、お客さんに幸せな気分になって帰ってもらわないといけない。そういった部分ですごく責任を感じますね」 インターは自由、プリプリは責任のベルトと、渡辺は解釈。インター王者時代とはまったく異なる立場でリングに立つ必要がある。 5・6後楽園では中島翔子を破り初防衛に成功した。山下からベルトを奪い、中島も退けたのだ。つまり初代王座決定戦を争った2人であり、東京女子の歴史を破ってきたことにもなる。それだけによりいっそうプリプリ王座の重みを嚙みしめているのではないか。 そんな渡辺の次期防衛戦は、6月9日の後楽園ホール。こんどは前哨戦なしの一発勝負で、バートビクセン(こちらもソフトボール経験者!)を迎え撃つ。 「ビクセンの試合は、(昨年4月)辰巳リカさんのインター王座に挑んだときにセコンドから見てました。海外の選手ならではの身長の高さや、腰も高くて足が長い。太腿も大きいイメージ。そういう選手にどうやったら攻め込むことができるか。そこがポイントになってくると思ってますね。私が持つプリプリ王座の新たなる道。その大きな一歩になると思います」