マッコールの表情と殺しのテクニックで会場が一体に!BLACKHOLEが『イコライザー THE FINAL』を語る上映イベントに潜入
2度のアカデミー賞に輝く名優デンゼル・ワシントンの代表作となったバイオレンスアクション「イコライザー」シリーズ。その最新作にして最終章となる『イコライザー THE FINAL』(23)の4K UHD+ブルーレイ、ブルーレイ+DVDセットの発売を記念して、新宿歌舞伎町の「LOFT/PLUS ONE」で「『イコライザー THE FINAL』パッケージ発売記念!ありがとう、マッコール…!!トークショー付き上映会」が開催された。 【写真を見る】マッコールの登場だけで会場中が大爆笑!やりすぎ強すぎな殺戮シーンに「まるで殺人鬼」 チャンネル登録者数4.3万人を超える人気YouTubeチャンネル「BLACKHOLE」のてらさわホーク、高橋ヨシキ、柳下毅一郎が登壇した今回のイベントは、一緒に映画本編を観ながら3人のトークを楽しむという、オーディオコメンタリーさながらの企画。YouTubeで毎回コアな映画談義を繰り広げる3人のトークを聞こうと会場に集まったのは、数多くの応募のなかから抽選で選ばれた幸運な100人の観客たち。いったいどんなトークが繰り広げられたのか。イベントの様子をたっぷりお届けしていこう! ■「積極的に殺しにいく」世の悪を完全抹消する“イコライザー”、マッコールの魅力とは 元CIAエージェントのロバート・マッコールが、世の悪を完全抹消する闇の仕事請負人“イコライザー”として暗躍する姿を描く本シリーズ。シリーズ初の長期海外ロケが敢行された最終章の舞台はイタリアだ。“仕事”で負傷し、肉体的にも精神的にも限界を迎えたマッコールは、イタリア南部の海岸沿いの町にたどり着き、そこで暮らす人々と心を通わせていく。彼らの温かさに触れ、この地で穏やかな余生を送ることを決意するマッコール。しかしイタリア全土を巻き込む危険な影が徐々に忍び寄り、マッコールは再び立ち上がることとなる。 本編上映前のトークコーナーでは、「原題は『The Equalizer 3』でしたが、邦題では『THE FINAL』と完結しちゃいましたね。寅さんのように盆と正月の年2回やってくれてもいいんですけどね」というてらさわの言葉からスタート。ここでは前2作を簡単におさらいしながら「イコライザー」シリーズの魅力や、シリーズを通してマッコールを演じてきたワシントンの凄みについて語られていった。 第1作『イコライザー』(14)では、不眠症を患いながらホームセンターで働いていたマッコール。深夜のダイナーで出会ったテリー(クロエ・グレース・モレッツ)がロシアンマフィアに売春を強いられ、激しい暴力を浴びていることを知った彼は、単身でロシアンマフィアに乗り込み壊滅に追い込む。そして配車サービスの運転手に転職した『イコライザー2』(18)では、かつての上司の死をきっかけに、“悪のイコライザー”となった元相棒のデイブ(ペドロ・パスカル)と一戦交えることとなった。 「観ている間はおもしろいと思っていても、終わったら細かいところを忘れてしまって、マッコールさんの活躍だけが記憶に残るのがこのシリーズの魅力ですね」とてらさわが語ると、すかさず高橋が「それを思い出すためにもブルーレイを!」とアピール。「配信だといつ観られなくなるかわからないから、それを避けるためにはディスクで残しておくのがいいですね」とてらさわが続けると、高橋は「“お気に入り”に入れてたのに全部観られなくなっていることもよくあるからね…」と呟くなど、丁々発止のやり取りで会場を温める。 また、柳下は「いろいろな復讐ものの映画があるけれど、そのなかでも一番怖い」と、ワシントンの不気味なまでの殺しの演技に太鼓判。「追い込まれてやむを得なくやるのではなく、積極的に殺しにいく。しかも常に楽しそうで、観るたびにこの人やばいなと思っています」と語ると、高橋から1作目でマッコールが読んでいた本がセルバンテスの「ドン・キホーテ」であるという補足が。「本人は騎士のいない時代に騎士道精神を体現しているつもりらしいのですが、僕の考える騎士とはだいぶ違います(笑)」と、その圧倒的な強さを強調した。 ■“殺し”のたびに拍手喝采!「マッコールさんは全部顔で語ってくれる!」 そうして始まった『イコライザー THE FINAL』の本編上映。まずは、シチリアのワイナリーに“仕事”のためにやってきたマッコールが、楽な手応えで地元のマフィアを叩きのめすシーンから幕を開ける。マフィアのボスが帰ってくると、建物のいたるところに転がった部下たちの死体を目撃。てらさわ曰く「お葬式の案内みたい」に廊下脇や廊下の角にある死体をたどっていった先に、悠々と座っているマッコールの姿が。 そのあまりにも陰惨な殺しのテクニックに大盛り上がりの3人が「怖い」と声を揃えるのは、マーセロ・ザーヴォスが手掛けた音楽。ハリー・グレッグソン=ウィリアムズが担当した前2作と打って変わり、ホラーっぽさを全面に押し出した音楽に乗せ、“9秒”で敵を殲滅させるファーストアクションが展開。高橋は思わず手を叩いて「これだけで大満足。ひとクライマックスありましたね」と笑みをこぼす。そしてボルテージが最高潮に達したタイミングで画面にタイトルが映ると、会場中から大きな拍手が湧きあがった。 ワイナリーでボスの孫に背中を撃たれて負傷したマッコールは、気がつくとアマルフィ海外に面した町の医師エンゾ(レモ・ジローネ)に助けられていた。映画の中盤までは、傷を負ったマッコールが杖をついて町を散策するシーンが続くのだが、画面いっぱいに映される風光明媚なロケーションにはBLACKHOLEの3人も「いいところだなあ」と見惚れてしまうほど。 そんな穏やかな町に少しずつ近寄る危険な気配と、それに気がつくマッコール。町の人々を苦しめるマフィアの下っ端マルコ(アンドレア・ドデーロ)に静かに圧をかけたり、町にやってきたCIA捜査官のエマ・コリンズ(ダコタ・ファニング)に眩しい笑顔を向けたり、その多彩な表情の変化に、高橋は「マッコールさんは全部顔で語ってくれる!」と大はしゃぎ。そこからはマッコールの登場だけで会場中が爆笑に包まれるなど、とてもR15+(15歳未満の鑑賞不可)のバイオレンス映画の上映をしているとは思えないアットホームな空気に。 中盤の見せ場でもあるレストランでのマルコとのやり取りから、オープニングのアクション以来となる「イコライザー」らしい凄惨なバイオレンスシーンの畳み掛けが始まる。待ってましたといわんばかりに画面にかじりつき、「完全に先制攻撃」「まるで殺人鬼」「主人公の活躍シーンとは思えない」とエキサイトする3人。柳下は「殺し方が陰惨で、マッコールさんはあんまり“魅せる”殺しをしないよね。それを映画でやられると、すごいものを観ている感じがします」と、あらためてその躊躇のない殺しっぷりに惚れ惚れした様子。 そしてマッコールがマフィアのリーダーであるビンセント(アンドレア・スカルドゥッツィオ)の家に乗り込んでいく怒涛のクライマックスでは、ダリオ・アルジェントのホラー映画さながらの恐怖演出に会場中が湧き立ち、1人殺すたびに大きな笑いと大きな拍手が入り乱れる。思わず悪人側に同情したくなってしまうほどのマッコールの無双状態に、本編が終わると「これで最後なんてもったいない!」と会場全体が名残惜しそうな空気に包まれていた。 高橋は「アクションとバイオレンスの違いは、アクションは人が死んでも申し訳なく思わなくて、バイオレンスは逆にもうやめてよと思うくらいやること。『イコライザー』は明らかにバイオレンスなのにアクションに寄せているし、その間を上手に攻めている」と称え、「3作目を観ると、やり過ぎるとホラーに近づくのだとわかりました。でもホラーと違って安心感があるのは、殺しているのがマッコールさんだから。若い時の話とかもやってほしいです」と、オリジンストーリーでシリーズの続行を熱望。 さらに柳下から「“Equalizer”って平等にするものって意味ですが、マッコールさんはみんな殺してゼロにして平等にする人ですよね。イメージとしては報いを与える人ですが、報いを与えすぎだろ!」と切れ味鋭いツッコミが飛び、てらさわも「正義とはなにか、それは“マッコールさんを見ろ”ということですよね。3作目まできて、独特なユニークさが極まった感じがします。この調子で世界中を転々としてほしいですね」とマッコールのさらなる活躍に期待を寄せていた。 ■映像特典&未公開シーンが収録!充実の特典映像の内容をチェック 現在発売中の『イコライザー THE FINAL』のパッケージは、4K UHD+ブルーレイセットと、ブルーレイ+DVDセットの2形態。どちらにも映像特典として3つの特別映像と9種類の未公開シーンが収録されている。ここからは、それらの内容を詳しくチェックしていこう。 映像特典の一つ目「デンゼルとアントワーンのコラボレーション」では、ワシントンがアカデミー賞主演男優賞を受賞した『トレーニング デイ』(01)で初タッグを組み、『マグニフィセント・セブン』(16)と「イコライザー」3作でコラボレーションを果たしてきたワシントンとフークア監督の絆の深さがうかがえるエピソードの数々が、本作の共演者やスタッフの証言と共に紹介されている。 また「洗練されたアクション」では、BLACKHOLEの3人も指摘していたようにホラー映画に限りなく近いものとなった本作のバイオレンス描写の舞台裏がひも解かれ、「人々の味方ロバート・マッコール」では町の人々のために義賊のような活躍を見せるマッコールの人間性にフォーカスが当てられていく。どれも本作の魅力をより深く感じるための一助となってくれることだろう。 さらに未公開シーンでは、カフェで働くアミーナ(ガイア・スコデッラーロ)とマッコールのロマンチックな関係から、ビンセントの周囲のストーリーまで、惜しくも本編からカットされた部分が補強されており、これを観るだけでまた異なる視点で本作を楽しむことができるはずだ。そして日本語吹替版も収録されており、ワシントンの声を担当しているのはもちろん大塚明夫。ほかに松本沙羅や広瀬竜一ら実力派声優陣が顔をそろえており、字幕派の人も日本語吹替版で新たな魅力を発見できるかも。 今回の和気あいあいとした上映イベントのなかで高橋が「一体感のあるなかで映画を観るのは常におもしろい」と語っていたように、アクションなどのスリリングな展開から、ヒューマンドラマにホラーの要素までたっぷり詰め込まれた本作は、エンタメ感満載で、大勢で盛り上がりながら観るのにうってつけ。前2作を観ていないという人でもしっかり楽しめるのはこうしたジャンル性の強い作品ならではの魅力といえよう。是非ともパッケージをゲットして、マッコールの勇姿を何度も繰り返し味わおう! 文/久保田 和馬