2024年はサザン・ロックの年だった アメリカ南部シーンの歴史と「今」を知る
政治の舞台でも求められたサザン・ロック
パターソン・フッドは、MJレンダーマンと、シンガーソングライターのカーリー・ハーツマンを擁するバンドで、サザン・ロックの名盤『Rat Saw God』を昨年発表したウェンズデイの大ファンだ。2023年のサザン・ロックにおける傑作といえば、ジェイソン・イズベルの『Weathervanes』も挙げられる。もともとトラッカーズでキャリアをスタートさせた彼が今年、民主党全国大会に招待されて演奏したことも、そのことを物語っている。イズベルはそこで、日曜日に教会に行く元気もないほど疲れ果てた労働者の、満たされない心情を歌った「Something More Than Free」を歌った。そのときステージの背景には、納屋に掲げられた巨大な国旗の映像が映し出された。一方、フッドが率いるトラッカーズは、アリゾナ州選出のマーク・ケリーとガブリエル・ギフォーズが主催する議員パーティーに参加した。 当然のことながら、保守派もサザン・ロックに意味を見出そうとした。RNC(共和党全国大会)では、ミシガン州の渡り鳥キッド・ロックが、トランプ候補(当時)への声援の合間にハンク・ウィリアムズ・ジュニアやRUN DMCの名を叫び、ナッシュビルのカントリーバンド・Sixwireは、オールマンズの「Midnight Rider」とマール・ハガードの「America First」をカバーした。最近、トランプ候補の宣伝で使われた、彼の肖像が刻印された100ドルの「銀貨」を宣伝する動画にも、納屋の香りがするサザン・ロックのサウンドトラックが使われていた。 もちろん、「サザン・ロック」は(共にジョージア州アセンズ出身の)B-52’sやR.E.M.のようなバンドも対象としており、彼らはサウンドやパフォーマンスに南部の要素はあっても、ステットソン・ハットやトニー・ラマのブーツを身に着けることはほとんどなかった。ビッグ・スターは言うまでもないし(メンフィス)、80年代初頭の代表作二つが今年リイシューされたdB’s(ノースカロライナ州→ニューヨーク市)のような先駆者たち、ルシンダ・ウィリアムズのようなシンガーソングライターたちも同様。彼らの歴史もまた、新しいサザン・ロックの根底に流れている。10月にピッツバーグで行われたハリス氏・ウォルズ氏の集会で、マイケル・スタイプとジェイソン・イズベルがR.E.M.の曲を演奏したのも、物事を良い方向に変えようという願いを込めてのことだった。二人はまた、新しい形の再建と「住み続けたい世界」への祈りを込めて、イズベルの曲「Hope the High Road」も歌っている。それは、今年どの政治家が行ったパフォーマンスよりも、アメリカという国をより説得力をもって表現していた。この感傷に耳を傾けることを願っている。
WILL HERMES