【阪神】月間最低打率でも…近本光司の変わらない姿勢 打てない期間に得られ、残せるもの
<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム> 阪神近本光司外野手(29)の言葉を思い出す。1年前のこと。昨年の交流戦で21打席連続無安打の期間があった。その時の感情を、近本はこう表現している。 【写真】子どもたちと並んで笑顔を見せる阪神近本 「自分が2人いる感覚。打てなかったら、めっちゃつらいんよ。『うわっ、くっそー!』と思っている自分がいる。その自分をもう1人の自分が慰めてあげる感覚だった。悔しがる自分と、『今のはこうこうこうだったからアウト、仕方ないよな』って思う自分がいる。そういう風にしてメンタルを保ってきた」 打席では投手と、そして人知れず自分と戦っている。そして、それを表には決して出さない。それが近本なりの、不調との向き合い方だと聞いた。あくまでいつも通り。やるべきことをやる。 今は結果が出ない。6月は83打数13安打、打率1割5分7厘。50打席以上立った月に限定すれば、プロ6年目で月間最低打率だった。6月27、29日と2試合連続で欠場。シーズン打率も2割4分7厘にまで落ち込んでいる。 ここ数日、近本の動きを、じっと見ていた。 とにかくいつも通りだった。6月30日のヤクルト戦の試合前練習。神宮の三塁側ベンチ前でストレッチを開始。中野拓夢内野手(28)とひと言、ふた言かわす。黙々とアップに入る。ティー打撃では右手1本、左手1本のいつものルーティンをこなす。 フリー打撃では力まず、センター中心。「練習ではショートの頭の上をいく打球を打っていきたい」と以前に語っていた通り、ライナーを打ち返す。表情には明るさも暗さもない。 29歳。今年で30歳になる。後輩も増えた。いや、後輩の方が多くなった。この、結果が出ない時の近本の姿勢をきっと、近くで見ているはず。全体練習前、いつもと変わらずに個別でバットを振る姿を。いつもと同じ時間に球場に来て、同じことを徹底的に繰り返す姿を。その生きざまから、得るものがある者もいるはずだ。 本人は1年前のように「めっちゃつらいんよ」と思っているかもしれない。ただ、打てない期間に、何かを残し、何かを得てきた男だ。今回も“タダ”では帰ってこないはず。黙々とバットを振る姿を見れば、その時を待ちたくなる。【阪神担当=中野椋】