「4月17日の豊後水道の地震」は、ほんとうに「南海トラフ巨大地震」の前兆ではないのか
南海トラフ巨大地震の想定震源域内で地震
南海トラフ巨大地震の想定震源域で発生した地震なのに、本当に南海トラフ地震とは無関係といえるのか。この地震は南海トラフ巨大地震発生の切迫性を示唆する「大地からの警告」ではないのか? 【画像】「南海トラフ巨大地震」で日本が衝撃的な有り様に…そのヤバすぎる被害規模 2024年4月17日(水)23時14分、豊後水道の深さ39キロメートルを震源とするM6.6の地震(以下「令和6年豊後水道地震」と呼ぶ)が発生した。愛媛県愛南町と高知県宿毛市で最大震度6弱のほか、中部地方から九州地方にかけ、広い範囲で震度5強~震度1が観測された。気象庁は、陸のプレートであるユーラシアプレートの下に沈み込んでいるフィリピン海プレートの内部で起きたスラブ内地震と推定している。この地震による被害は少なかったが、南海トラフ巨大地震の想定震源域内の地震発生ということで、当然ながら南海トラフ巨大地震の発生に何らかの影響を与えるのではないかという点に関心が集まった。 地震の専門家たちは「今回の令和6年豊後水道地震の規模はM6.6と比較的規模の小さい地震なので、南海トラフ地震を誘発するような地震ではない」「南海トラフへの影響がないとは言い切れないが、無視できる程度の規模だろう」などの意見が多かった。 政府の地震調査委員会委員長の平田直(なおし)氏(東京大学名誉教授)も令和6年豊後水道地震について、「南海トラフ地震が起きる可能性を直ちに調査するようなものではない」とコメントしている。南海トラフ地震の震源域内で想定震源域内で6.8以上の地震が発生した場合、南海トラフ地震の評価検討会を開き、調査開始などを知らせる「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」や、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」などを発表することになっているが、 今回の地震は6.6なので、その規模(マグニチュード)が0.2基準に達しておらず、評価検討会の開催や直ちに調査すべき対象とならず「臨時情報」の発表もないとしている。 ちなみに評価検討会は、2017年11月1日より気象庁に設置された有識者会合で、正式名称は「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」(会長 平田 直 東京大学名誉教授)。会合には「臨時会合」と「定例会合」があり、臨時会合は、想定震源域内で観測データに異常が現れた場合や一定規模以上の地震が発生した場合、南海トラフ地震との関連性を緊急に評価する会合。定例会合は、平常時から観測データの状況を把握するためで、原則毎月1回開催されている。 評価検討会の委員は、現在、6名の有識者で構成されていて、気象庁以外の観測データについても説明を受けるため、関係機関(国土地理院、海上保安庁、防災科学技術研究所、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所)も評価検討会に参画している。 地震の専門家たちが口を揃え「令和6年豊後水道地震は南海トラフに影響なし」とする根拠は主に規模とメカニズムの二つに収斂される。規模は前述した。メカニズムについてはどうか。想定される南海トラフ地震は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートとの間のプレート境界が想定震源域とされ、ユーラシアプレートの下に沈み込んでいるフィリピン海プレートの内部(スラブ内)が震源の令和6年豊後水道地震とはメカニズムが異なるので影響なしとしている。が、本当に影響はないのだろうか?