中川大志インタビュー「演じるのではなく、役と一心同体に。舞台だからこそ行ける境地、領域がある」
役づくりに意識していること
──岸谷さんから、起用の理由を聞かれましたか? 「はい。岸谷さんとお食事に行った際、『歌妖曲』の感想をいただきました。寺脇さんとは何度かご一緒したことがありますが、岸谷さんとは今回が初めて。作品への向き合い方や役へのアプローチの仕方など、そんなところまで見てくださっているんだ!と驚きました。演出家であり俳優であるからこそのありがたいお言葉をたくさんいただいて本当に嬉しく、また身が引き締まる思いでした。 映像で演劇に関わっている先輩方とご一緒すると、皆さん、言語化できない強さをお持ちなんですが、自分が舞台を経験して、その理由が少しだけわかった気がします。映像は瞬発力が大事で、準備期間にも限界があります。その点、舞台は稽古期間を含め、2ヶ月以上作品、そして役と向き合います。だからこそ行ける境地、領域があり、役と一心同体になる。演じるという感覚とは違って、本当の意味で自由になれるような。今回もポエムとしてどう生きられるのか、楽しみです。『儚き光のラプソディ』はいつの時代にも通じる、人間の中にあるものを描いています。時代が流れて変わってきたもの、変わらないもの、変わっていかなきゃいけないもの……、そんなテーマがあるように思います」 ──役づくりの際に意識していることはありますか。 「日々、自分の力不足を悔しく感じることがあり、20代になっていろいろと試行錯誤してきました。役者は自分ではない誰かを演じるけれど、でも結局自分ではない誰かにはなれないんです。自分自身が何をされたら嬉しいのか、何をされたら悲しいのか、その感情の湧き出てくる大元は僕でしかないと思うので、そこを役とどう結び付けていけるのかを考えます。例えば、その役が大好きな食べ物があるとして、だけどそれは僕が好きな食べ物とは違う。その場合、自分が大好きなものって何だろう? と考えるんです。役が悲しんでいる状況だったら、自分がこれぐらい悲しい状況って何だろう? と。基本、常に自分の中にある感情を掘り起こすようにしています。自分のことって案外自分ではわからない部分も多く、そこを監督や演出家に見つけていただけるのが面白いです。今回も自分が知らない自分が出てきたらいいなと」 ──共演の風間俊介さんと鈴木福さんの印象は? 「風間さんとは初めてご一緒させていただきます。大先輩で、年輪というか、強さが感じられる上に、すごくスマートで知的、優しい方です。個人的にはもっと崩れた風間さん、隙がある風間さんを見たいなって。福くんとも共演は初めてですが、12、13年くらい前、ドラマの撮影の際に、福くんが隣のスタジオでドラマを撮っていたことがありました。その時にちらっと楽屋でお会いして。僕は中学校1年生くらい、福くんはまだ小さかった……、という話を福くんとポスター撮影の時にしました(笑)。 だいたい、かつてはどの現場でも僕が一番年下だったのですが、最近は下の世代がいる現場も増えました。今回も年下の福くんがいて嬉しいですし、楽しみでもあります。風間さんも福くんも僕も子役出身。どこか共有できるところがあるんじゃないかな」