闇バイトの応募者たちは一体何者なのか?若者に自重呼びかけるTV報道番組の「盲点」
「最悪の場合、死刑になります」──テレビの情報番組は連日、闇バイト強盗のあくどい手口と刑罰の重さを伝えるが、手を出す連中はいっこうに減らない。減らないどころか、いよいよ凶悪化、低年齢化して、中学生まで捕まった。オレオレや振り込めなど特殊詐欺の出し子・受け子らも増加中で、闇バイト検挙人数は去年の約10%増だった。 羽賀研二の逮捕事件は司法界も揺るがしかねない テレビがあれだけキャンペーンしても減らないのはなぜか。そもそも10代、20代はテレビを見ない。お笑いバラエティーやドラマに興味はなく、スポーツもSNS動画で見てしまう。ましてや、闇バイトの危険性を警告しているワイドショーやニュース、報道番組など見るはずもない。 フジテレビ系のワイドショー「めざまし8」の司会・谷原章介は、「(闇バイトをやってしまっても)早めの出頭。引き返すことに遅いということはない」と呼び掛けるが、番組を見てうなずいているのは中高年だけ。Z世代の4割が闇バイトの求人を見たり、勧誘されたりした経験があるというが、その危うさには気づいていないのが実態だ。 さらに、「テレビ番組は闇バイトの実態を誤って伝えている」と元警察庁幹部は指摘する。 「テレビではよく、普通の若者が高収入に騙されて闇バイトに手を出すかのように取り上げています。そういうケースもなくはないが、実態は普段から素行不良、半グレ予備軍、前歴ありの連中が少なくありません。アルバイトなんかではなく、犯罪すれすれの常習組。だから、『あんなことをやらされるなんて知らなかった』なんて、まあウソでしょうね。だいたい、人を死ぬまで殴り続けるような残忍なことは、“素人の若者”はできませんよ」 ただ、テレビ報道がネットにポスト(投稿)されるようになって、異変が起きている。闇バイト料の相場が大幅に下がっているのだ。「高すぎるバイトはヤバイ」とSNSで広がり、段ボールを運ぶだけで5万円なんていう“求人”はもう応募がないという。高額報酬は、闇バイトの情報を収集しているSSBC(警視庁捜査支援分析センター)にも目を付けられる。 そこで近ごろは、普通のアルバイトより少し高めの、たとえば時給1500円とか2000円にして信用させるようになった。安くなっても、もちろんやることは同じ。強盗や特殊詐欺の実行役だ。トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の指示役や元締にしてみれば、安く実行犯を集められるのだから、かえってシメシメである。 それにしても、ここ1年で急に闇バイトが増えたのはなぜか。前出の元警察庁幹部は「食い詰めた暴力団が焦っているのです」という。 「コロナ禍でシノギが激減、でも組員も減って、もう大きいヤマ(犯罪)は踏めない。そんなときにルフィ事件が起きて、『その手があったか。うちもやろう』ということになっています。暴力団にとって、闇バイトは新しい“ビジネスモデル”というわけです。特殊詐欺から強盗へとエスカレートし、今後はさらに多くの犯罪に広がると考えなくてはなりません。すでにサケの密漁、スマートフォンのニセ契約、メルカリの架空取引、自動車盗難などの実行役もSNSで募集されています。被害も増えそうです」 テレビが取り上げるべきは、こうした闇バイト犯罪に巻き込まれないための一般の人向けの対策じゃないか。