センバツ2019 創部7年の歩み/下 上ノ山倫太朗さん 後輩の成長、そばで見守る /福井
<第91回選抜高校野球> ◇粘り強さ 甲子園でも センバツ出場決定の吉報が啓新にもたらされた1月25日、穴水芳喜主将(2年)は、創部7年の歴史をかみしめるように語った。「先輩たちが土台をつくってくれた」 2012年4月、野球部は1年生16人で始まった。練習施設も十分にはなかったが、初代主将の山崎雄莉さん(22)は「むしろチームを作り上げる喜びがあった」と振り返る。 練習環境は徐々に整ってきた。部員数も増え、1年生から3年生までそろった14年夏の福井大会、山崎さんら1期生が率いる啓新は準決勝まで駒を進めた。決勝進出を懸けた大一番で平沼翔太選手(現日ハム)擁する敦賀気比と対戦。九回裏に逆転を許し5-6でサヨナラ負けを喫した。「やりきったという気持ちの半面、悔やしさでいっぱいだった」と山崎さん。しばらくテレビの甲子園中継を直視できなかった。 以来4年間、啓新は夏の福井大会で8強以上の成績を残すも、負ける試合は必ず1点差という「負のジンクス」を背負ってきた。 「自分が啓新を甲子園に連れていく」。前主将の上ノ山倫太朗さん(3年)も強い気持ちで入部した1人だ。中学2年で発症した1型糖尿病のため毎日インスリン注射が欠かせない。それでも仲間に支えられて練習に励んだ。だが昨夏の福井大会は準々決勝で若狭に4-5で敗れた。「自分がマウンドに上がれなかったこともあり悔しくて悔しくて。どうしてまた1点差なんだろう」。グラウンドで涙が止まらなかった。 そんな3年生の悔し涙が、後輩たちを強くした。昨秋の公式戦では3試合を1点差でものにした。試合終盤での粘り強さがチームの身上となった。 上ノ山さんは大学で野球を続けるため、今冬も後輩と一緒に練習をしてきた。現チームを「最初は弱かったのに、試合を経るごとに成長していった」と評価し、「甲子園でも自分たちの野球を貫いてほしい」。 「粘りの啓新」が甲子園で花開く日はもうすぐだ。=この連載は塚本恒が担当しました