ヨシムラで1機ずつ入念に組み上げ、最終的にエンジンベンチでチェックしたというB6型。鍛造ピストンやスペシャルカムシャフトを組み込み、各パーツのバランス取りやポート研磨などを実施した結果、148ps/16.3㎏-mというスペックを実現した

【1992年式 ヨシムラ MCL.ロードスター（NA6CE）】 「ヨシムラ」といえば、「ポップ吉村」の愛称で知られた吉村秀雄さんが設立し、60年以上の長い歴史を誇る二輪車のアフターパーツメーカー。 同社はマフラーやエンジン系パーツなど、これまでに数え切れないほどのアイテムをリリースし、多くのバイク好きから支持されてきた。 一方レース界でも世界に知られる存在で、あの鈴鹿8時間耐久ロードレースには1978年開催の第1回から参戦し、ワークス勢を退けて通算4度の優勝を手にするなど、数々の金字塔を打ち立ててきた。 【画像16枚】二輪界の偉人が作り上げた痛快無比のコンプリートカー：：カムカバーにはMCLの証である「YOSHIMURA」のエンブレムが貼られている このように、長い歴史のなかで数々の栄光と実績を上げてきたヨシムラだが、じつは二輪だけにとどまらず四輪も手がけていた。 ホンダN360やS600/800のチューニングを行い、1960年代にはS600/800でレースにも参戦。 JAFグランプリ優勝などの輝かしい成績を残してきたのだ。 そんな四輪の世界でもひと花咲かせたヨシムラが、90年に1台のコンプリートカーをリリースした。 それが、ヨシムラMCL・ロードスターである。 最高出力を7000回転で発揮！ 高回転型に設定されたエンジン パッと見はノーマルかあらそれほど大きな変化を感じないMCL・ロードスターだが、最大のトピックはエンジンにある。 直列4気筒DOHCのB6型は排気量こそノーマルと変わらないものの、鍛造ピストンを採用してカーボンヘッドガスケットを組み合わせることで、圧縮比を10.6に設定。 さらに、各部の重量バランス取りやポートの拡大&研磨を行い、スペシャルカムシャフトを装着。 ECUもスペシャルコンピュータユニットに交換し、ノーマルよりも28 ps/2.3㎏‐mアップの148ps/16.3㎏‐mというスペックを手に入れた。 また、最高出力を7000rpmという高回転で発揮させ、バイクのような官能的なフィーリングとサウンドを実現。 こうした乗り手に響くチューニングも、じつにヨシムラらしいと言えるだろう。 さて、ここまではエンジンについて説明したが、当然その他の部分にも手が入れられている。 エクステリアは、マツダスピードと親交が深かった故・山梨信輔さん(ノバエンジニアリングを設立したひとり)が立ち上げたMCLが担当し、専用のフロントノーズやリアスポイラーを装着。 足まわりには、バネ下重量を軽減するオリジナルデザインの15インチスポーツホイールがおごられ、オプションでサスペンションキットも用意されていた。 当時ごく僅かな台数しか生産・晩梅されなかったコンプリートカー このMCL・ロードスターは、チューニング済みのフル公認車両として販売されたほか、車両持ち込みでのエンジンチューンも行っていた。 しかし、正式な台数こそ把握できていないが、コンプリートカーとして生産された車両はわずかで、現存数も数えるほどしかないはずだ。 当時ハチロクに乗っていたオーナーは、それまでロードスターに対して特別興味はなかった。 しかし、偶然にもMCL・ロードスターに試乗する機会を得て、ドライブしてみたら二輪を彷彿させるような優れたレスポンスと官能的なフィーリングにノックダウン。 その後まもなく、コンプリートカーとして購入したそうだ。 それ以来、四半世紀という長い時間をともに過ごしてきたオーナーは、今でも通勤のアシとして、また休日のドライブに使っている。 ードスターを末長く維持していくために、日々のメンテナンスは欠かせないようだ。 主要諸元　SPECIFICATIONS 1992年式 ヨシムラ MCL.ロードスター（NA6CE） ●全長×全幅×全高(㎜) 4000×1670×1220 ●ホイールベース(㎜)　 2265 ●トレッド前/後(㎜) 1405/1420 ●車両重量(㎏)　 1010 ●エンジン型式　 B6型 ●エンジン種類 直列4気筒DOHC ●総排気量(cc) 1597 ●ボア×ストローク(㎜) 78.0×83.6 ●圧縮比10.6:1 ●最高出力(ps/rpm) 148/7000 ●最大トルク(㎏-m/rpm) 16.3/5200 ●変速比 1速3.136/2速1.888/3速1.330/4速1.000/5速0.814後退3.758 ●最終減速比 4.300 ●ステアリング ラック&ピニオン ●サスペンション ダブルウイッシュボーン(前後とも) ●ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク ●タイヤ 195/50R15(前後とも) ●発売当時価格 330万円 初出:ハチマルヒーロー vol.47　2018年 5月号 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)