7月~9月前半の日経平均株価の振り返り、「20円の円高進展」がもたらす株安【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
2024年の8月の日経平均株価の大暴落をきっかけに株価や為替の乱高下が続く昨今。本稿では、ドル円の関係を軸に、7月から9月前半の経済状況をエコノミスト・宅森昭吉氏が振り返り、日経平均株価の動向の背景について解説します。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
ドル円レートとNYダウで8割が説明できる…7月~9月前半の日経平均株価動向
最近は、株価や為替の大幅な変動を伝えるニュースが流れることが多く、人々の景況感に影響を与える機会が、多くなっているように思われます。2024年7月1日~9月13日の日経平均株価(終値)のドル円レートとNYダウ(前営業日終値)による回帰式をつくると、以下のようになりました。 日経平均株価(終値)=▲71,744.1+334.3977×ドル円レート (▲7.05) (14.6) +1.481324×NYダウ(前営業日終値) (7.43) 自由度調整済み R2:0.803 観測数:53 ( )内はt値。数字の大きさでパラメータが有意であること確認。 自由度調整済み決定係数が0.803なので、7月から9月前半の日経平均株価は、ドル円レートとNYダウ(前営業日終値)で8割が説明できることになります。1円、円高が進むと、約334円、日経平均株価が下落する関係にありました。 NYダウの約1.5倍など大きな変動が、日経平均株価史上最大の下落を招いたか また、NYダウが1ドル低下すると、日経平均株価は約1.5円低下と大幅に変動することがわかります。この2ヵ月間に、米国の先行きの景気後退観測でNYダウが大きく下落する局面がありましたが、下落幅が史上ワースト10に入ったことはありませんでした。 一方、日経平均株価は3回、史上ワースト5に入る下落幅を記録したことと対照的です。
7月末、1ドル=150円割れの円高を招いた、日銀の利上げと植田日銀総裁発言
日米金融当局の金融政策変更に関する市場の反応で円高・ドル安が進みました。7月初めの1ドル=160円程度の円安でしたが、7月は円高方向に振れ、30日までは1ドル=150円台で推移しました。 FRBは、7月31日にFOMCの結果として、フェデラルファンド金利の誘導目標を5.25%~5.50%で据え置くことを発表しました。一方、日銀は7月31日の金融政策決定会合で0~0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げることを決めました。 7月31日には、さらに植田日銀総裁が記者会見で「経済・物価情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」などと発言をしたことが円高に拍車をかけました。特に、壁として「0.5%は意識していない」との発言は、断続的に利上げする印象を与えたとされたようです。 こうして、1ドル=150円を突破し。140円台になりました。その後、今後の日銀の利上げ時期・回数の見通し、FRBの利下げ時期・幅・回数の見通し、さまざまな要人発言、重要経済指標などを巡ってさまざまな思惑が飛び交いました。結果として9月13日には141円を割り込み140円台になりました。 最近2ヵ月半の期間で、約20円、円高が進行したことが、日経平均株価の下落要因になったようです。一方、NYダウは最近2ヵ月半の期間で変動しながらも約2,000ドル上昇していて、こちらは長い目でみると、日経平均株価の上昇要因になったようです。