「ポスト岸田」が過熱 「次期衆院選に勝てない」の声噴出も…首相は総裁再選に意欲 まさかの派閥頼み延命、自己矛盾に批判
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「党内政局のポイントは、菅氏と麻生氏という『2人のキングメーカーの相克』だ。菅氏が号砲を鳴らしたことで、総裁選に向けた駆け引きが徐々に加速していく。岸田首相は、麻生氏の手札の1つだ」と分析する。
岸田首相も政権維持への執念を絶やしていない。
岸田首相は21日の記者会見で、物価高対策として、5月使用分を最後に終了した電気・ガス料金の負担軽減策(補助金)を再開すると表明した。さらに、年金世帯や低所得者を対象にした給付金の支給を検討する考えも示し、物価高への支援策を打ち出した。国民に「甘いアメ」をぶら下げる作戦のようだ。
また、岸田首相は8月、カザフスタンを訪問して、中央アジア5カ国との首脳会談を行うという。これに合わせてモンゴルも訪問するが、意味深長といえる。岸田首相が意欲を燃やす北朝鮮外交の水面下交渉の舞台の1つがモンゴルなのだ。
さらに、朝日新聞は27日朝刊で、「岸田派 すがる うごめく」との見出しで、岸田首相が解散したはずの岸田派の面々と首相公邸などで酒席を交え、総裁選を視野に入れた組織固めに動いていると報じた。
同紙は「あきれる他派閥」として、党内で批判が噴出していることを伝えている。
■「顔」を変えるだけでは甘い
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相の行動は『派閥政治』そのものだ。派閥をあっさり解消しながら、ここに来て信頼できるのは派閥の子分だった木原誠二氏らだ。そして、怒りを買って存続を〝容認〟した麻生派が、総裁選での頼みの綱だ。『政策集団』『仲良しグループ』と言い方はあるが結局、信頼関係に基づく〝塊〟が政治家の命綱だ。岸田首相はそれを理解し、派閥を便利に使っている。国民は当然その現実を見抜いている」と断じた。
こんな状況で、岸田首相の総裁再選はあり得るのか。
前出の鈴木氏は「自民党内では、岸田首相が出ても勝ち目は薄いというのが一致した見解だ。総裁再選は相当厳しい。各議員が地元に帰るお盆前後は総裁選1カ月前で、党内政局も本格化しているだろう。ただし今回は、表層的な自民党改革では通用しない。党の『顔』を変えるだけでは甘く、裏金問題に象徴される古い体質や、官僚主導を一掃する覚悟を見せないと、いよいよ国民に見捨てられるだろう」と断じた。