藤井聡太と戦う覚悟~現役最年少・藤本渚四段インタビュー「悔しい気持ちは、なくさない」
2023年10月時点の現役最年少棋士であり、現在、高校に通いながらプロ棋士として活躍している藤本渚四段。本稿では11月4日に発売された、将棋世界Special『八冠 藤井聡太―全冠制覇で突入する将棋界新時代』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)のインタビューより、抜粋してお送りいたします。 井上慶太九段門下の18歳。第54期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)では、惜しくも同門の上野裕寿四段に敗れ準優勝となりましたが、第13期加古川青流戦では、見事、史上最年少優勝を飾りました。藤井八冠を追う棋士のひとりとして、藤本四段は藤井八冠にどのような印象をいだいているのでしょうか? 藤井聡太の存在 ――さて、いよいよ藤井八冠のお話をうかがいます。奨励会での接点はありますか。 「藤井先生の四段昇段(2016年10月)とほぼ同時に僕が入会(同9月)したので、全く接点はないですね。その頃の僕は小学生棋士になるには何勝何敗でいかないといけないとか、かわいく計算していました」 ――小学生らしいエピソードですね。では藤井八冠の存在を知ったのはいつ頃ですか。 「小学生が詰将棋解答選手権のチャンピオン戦で優勝したと聞いて、そんな人がいるんだと思いました。自分は一般戦(3クラスあるうちの真ん中)でようやく全問正解して喜んでいたレベルです。チャンピオン戦の問題に取り組んだことはありますが、解いたつもりで答えを見たら全部間違えていました」 ――普段、詰将棋は解きますか。 「(無言で首を横に振る)奨励会の頃、内藤國雄先生(九段)や北村憲一さんの作品集に取り組みましたが難しくて。詰将棋を解く力と終盤力はまた違います。詰将棋は相手の玉を詰ませればいいんですが、実戦の終盤だと自分の玉もあるのでそんなに簡単な話ではありません、っていう言い訳をして逃げ腰です」 ――藤井八冠がプロ入り直後に29連勝した時期は奨励会に入ったばかりだったんですね。どういう気持ちで見ていましたか。 「もちろん、早く負けてくれという気持ちは強かったです。うれしくはなかったですし、悔しかったです」 ――既に棋士だった藤井八冠と、奨励会に入りたての小学生では随分と立場が違います。それでも悔しかったのですか。 「立てるのであれば自分がその立場に立ちたいですし、面白くないなと思っていました。ただ現実を知って、藤井先生があまりにも強いことがわかってきました。でも悔しいという気持ちがなくなるのはよくないと思うし、なくなることもないと思います」 (藤本渚四段「藤井聡太と戦う覚悟」より) (インタビュー文、写真)諏訪景子
将棋情報局