BUMP OF CHICKEN、5年ぶりに東京ドームのステージへ 一貫して鳴らし続けた“君”への想いが結実した日
「BUMP OF CHICKENの音楽は、一曲残らず、一音残らず、一休符残らず、全部幸せです」
本編ラストを飾ったのは、超ビッグスケールを誇る新たなライブアンセム「窓の中から」だ。4人の渾身の歌と演奏に、次第に一人ひとりの歌声が重なっていく圧巻の展開。終盤、藤原はイヤモニを外し、花道を渡ってセンターステージへと向かった。何度も歌声を求め、観客は何度も渾身の歌声を重ねて応えていく。最後は、一人ひとりの観客の声を自らのエネルギーに換えるようにして、超ロングトーン&フェイクを通して言葉にならない想いを伝え抜いてみせる。このライブが終わったら、私たちはまた、たった一人で、自分だけの人生を生きていかなければならない。それでも〈一人で多分大丈夫〉。お別れの歌「ray」から歌い届けられてきた温かな実感が、「窓の中から」を通して揺るぎない確信へと変わる。なんて感動的なクライマックスなのだろう。 アンコール1曲目は、「You were here」。藤原は、いよいよライブが終わってしまうという現実を前にして、〈こんなに 今こんなに愛しいのに〉〈君の昨日と明日に 僕もいたい〉という切実な想いを歌う。ラストは、「ここから伸びた時間の上で歌うよ」と歌詞を替えて歌い、そしてアウトロに「会いにいくよ」「探し出すよ」「見つけ出すよ」「会いに来てよ」と原曲にない言葉を一つずつ懸命に重ねていく。続く「ガラスのブルース」でも、一人ひとりの"君"への想いが何度も歌詞を替えて歌われ、ここでライブが幕を閉じたかと思いきや、藤原が不意にアカペラで「花の名」を歌い出し始めた。Bメロから増川のギターが、サビから升のドラムが、1番終わりから直井のベースが合流していく。最後に藤原は、この夜を通して一人ひとりの観客と同じ時間・空間を共にすることができた実感を噛み締めるように「僕だけに 僕らだけに」と替えて歌ってみせた。 このようにして、万感の終幕を迎えたこの日のライブ、および、今回のツアー。最後にステージに残った藤原は、「一個だけいいかい」と前置きした上で、「俺の、BUMP OF CHICKENの音楽は、一曲残らず、一音残らず、一休符残らず、全部幸せです。生まれてきた世界に、君がいたからです」と語り、ステージを去っていった。 総じて、BUMP OF CHICKENが28年以上にわたって一貫して鳴らし続けてきた"君"への想いがあまりにも美しい形で結実した、とても感動的なツアーだったように思う。これまでの28年間を通して生まれた歌、紡がれてきたメッセージ、その全てが一つに繋がっていくような奇跡的な一貫性を、この一夜を通して何度も強く感じた。そして、その一貫した想いこそが、私たちが、4人を、4人の音楽を、心から信じ続けることができる理由であると、改めて強く感じた一夜だった。
松本侃士
【関連記事】
- 【ライブ写真】BUMP OF CHICKENの音楽が果たしてきたリスナーの力を引き出す手助け 『be there』ツアーで取り戻された多くのもの
- 【ライブ写真】BUMP OF CHICKENという音楽の生命の源にあるもの 歓声の中で躍動したツアー『be there』有明アリーナ公演
- BUMP OF CHICKEN 藤原基央、45歳を迎える 直井由文も大好物のトマトの絵文字で祝福
- SEKAI NO OWARI、RADWIMPS、BUMP OF CHICKEN……スタジアム規模のバンドがなぜライブハウスツアー?
- BUMP OF CHICKEN、Official髭男dism、マカロニえんぴつ、優里……人気アーティストの意外なルーツ