「駆け抜ける喜び」はまだ健在か? BMWの新型5シリーズ「i5」に試乗。
BMWの人気モデル「5シリーズ」がフルモデルチェンジ。新型はどう進化した? モータージャーナリストがさっそく試乗。レポートをお届けしよう。 【画像】新型5シリーズの詳細を見る!
5シリーズの魅力
ドイツのBMWが新型5シリーズを2023年5月に発表しました。8代目になった5シリーズの特徴は、多岐にわたります。4種類のドライブトレインが用意されたほか、デジタライゼーションといって、たとえば車内でゲームを楽しめる機能なども導入されました。 私は、23年9月下旬に、ポルトガル・リスボンで、4つのドライブトレインのうちピュア電動車である「i5」に乗る機会がありました。試乗したのは、日本に導入される「i5 eDrive 40」と「i5 M60 xDrive」。前者はモーター1基の後輪駆動。後者はモーターが2基になっての全輪駆動。こっちはよりパワフルな仕様です。 5シリーズといえば、初代が発売されたのは1972年。走りが楽しめるセダンという、当時としてはかなり斬新なコンセプトで人気を博しました。当時ドイツでは、高級セダンといえばメルセデス・ベンツ一強。でも、ドライブを積極的に楽しむクルマではありませんでした。 そこでBMWは、操縦性とパワフルなエンジン、そして流麗なデザインでもって、いっきに独自の立ち位置を確立しました。私も、初代5シリーズの、ムダのないクリーンなラインと、4灯式ヘッドランプの個性的なフロントマスクにシビれたクチです。 欧州、とくにドイツでは、5シリーズの人気はずっと高く、BMWのラインナップのなかでも売り上げは3位とか。理由のひとつは、カンパニーカーといって、企業が社員にある種のインセンティブとして貸与する車両としてのニーズがあります。 別の面からみれば、ビジネスアスリートを標榜してきた先代など、SUV全盛のご時勢でも、ザ・セダンともいうべき端正なデザインの5シリーズを評価するひとが多いといえるでしょう。
BMWらしさはEVでも健在か?
8代目になった新型は、ボディサイズが先代よりも大型化しました。理由は、i5の存在にあります。i5では81.2kWhという大容量の駆動用バッテリーを床下に積みます。そうなるとどうしても車高が少し上がってしまいます。 今回は、先代に対して36mm上がって1515mm(i5 M60 xDriveのみ1505mm)になった車高と、全体のプロポーションとのバランスをとるため、全長と全幅を少し大きくしたと、BMWのデザイナーは教えてくれました。 「セダンはいまもブランドの中核に位置づけられる重要な存在」というだけあって、流麗なセダンフォルムの実現が大きな課題だったそうです(5シリーズのプロダクトマネージャーを務めるオリバー・ムンダー氏)。 リスボンでは、市街地、高速道路、それにワインディングロードを走りました。ひとことで感想をいうと、「40」は速い。そして「M60」はさらにスポーティ、でした。 アクセルペダルを強めに踏み込んだときの加速力は、たいしたものです。あっというまに制限速度に達してしまいます。その間、周囲のクルマはたちどころに後ろに退くという感じです。 ただし一時期の電気自動車のように、やたらと加速性を強調するようなことはなく、ペダルを踏んでいくと最初のほうではややゆるやか。そこからどんどん速度を上げていくといった、BMWのエンジン車を連想させるキャラクターに仕上がっています。私はそこに感心しました。 BMWらしさは、ハンドル操作を通してドライバーである私が感じる、独自のステアリングフィールも大きく貢献しています。カーブを抜けていくのが楽しいのです。 同時に静粛感が高く、外部からの騒音がほとんど気になりません。オプションのバウアーズ&ウイルキンスのカーオーディオは、ステージを観ているかのように、音が前から聞こえてくる設定で、これもとてもいい感じです。 そしてもう一台。M60のほうは、足まわりがよりシャキッとしていて、つまり、硬めで、車体のロールも少なく、いってみればスポーツカーに近い感覚を受けました。 試乗したモデルには、オプションで「パワーブースト」と「ローンチコントロール」が備わっていました。市街地で使う機会はめったにないでしょうが、アクセル開度が多めの状態でこのレバーを操作すると、トルクが積み増しされるというものです。