韓国検察、尹大統領の捜査開始 内乱容疑で前国防相逮捕 警察、出国禁止措置検討
【ソウル時事】韓国検察の特別捜査本部は8日、内乱容疑で尹錫悦大統領に対する捜査を正式に開始したと明らかにした。 現職大統領が内乱容疑で捜査されるのは初めて。尹氏は3日の「非常戒厳」の宣言を巡り、金龍顕前国防相と共に内乱容疑で刑事告発されていた。野党は9日、政権から独立した立場で捜査する特別検察官の設置法案を国会に提出した。 韓国メディアによると、検察は8日、出頭した金前国防相を緊急逮捕。所持品の携帯電話を押収し、拘置所に移送した。金氏は尹氏の側近で、戒厳令を出すよう進言したとされる。出頭前に新しい携帯電話と交換し、証拠隠滅を図った疑いもある。 金前国防相は高校の後輩である尹氏と共に、戒厳令の宣言を巡る一連の動きを主導したとみられている。金善鎬国防相代行(次官)は5日の国会審議で、国会への兵士投入は「金前国防相が指示した」と証言していた。 検察の朴世鉉特別捜査本部長は8日、記者会見で「地位にかかわらず、厳正に捜査を進める」と強調。尹氏について「多くの告発状を受理しており、手続きに従い捜査している」と説明した。本部は検事や、軍から派遣された軍検事ら計約60人で構成するという。 警察も8日、国防相執務室や官舎など金前国防相の関係先を家宅捜索した。警察は120人体制で、検察とは別に捜査を進めており、尹氏の出国禁止措置を取ることを検討する。警察を所管する李祥敏行政安全相は8日、辞任した。尹氏の側近で、野党などが内乱容疑で刑事告発していた。 憲法は大統領に関し「内乱または外患の罪を犯した場合を除き、在職中は刑事上の訴追を受けない」と規定。内乱容疑は大統領の「不訴追特権」の例外になっている。刑法は、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした場合に内乱罪を適用し、死刑または無期懲役などを科すと定めている。 革新系最大野党「共に民主党」は声明で、検事出身の尹氏と検察は「利害を共有し、内乱を隠蔽(いんぺい)する動機がある」と主張。警察中心の捜査や、独立した特別検察官の設置を求めていた。