AE86を現代の乗り味に仕立て上げるレストア事業「TOM'Sクラシック」とは?
トムスは1月10日~12日の期間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されている「東京オートサロン2025」にてブースを出展している。 【画像】ブースのいちばん目立つ場所に展示しているAE86のホワイトボディ。単にキレイになっているだけでなく、現代のクルマのような乗り味になるよう適所に補強が施されている トムスブースでは、同社が手掛けるレストア事業「TOM'Sクラシック」を紹介している。近年は1980年代~2000年代に発売されていたスポーツタイプのクルマの人気が高くなっているが、2000年代でも現在から見れば20年ほど前のクルマとなるだけに、本来の乗り味を体験するには通常の修理だけでは不足。車種ごとの特徴にあう徹底した修理と整備が必要だが、そこで生きてくるのがトムスがレース活動や製品開発で培った技術やノウハウだ。 この取り組みは東京オートサロン2024にて発表されたもので、すでに作業依頼が入っていて、現在も工場では数台の作業が進んでいるという。 なぜトムスはこうしたレストア事業をはじめたのか? 今の時代は、ネオクラシックと言われる1990年代~2000年代の旧車が流行っているので、このジャンルに参入することはビジネス的にメリットがあることだが、トムスとしては狙いはそこではないという。 そもそもこの年代のクルマが見直されている理由として、現在のクルマにはない独特のおもしろさがあるという点が挙げられる。そのため乗ってみたいと思う人が増えているのだ。 ところが対象となるクルマはどれも年式が古いため、何かしら手を入れないといけないようなコンディションのものがほとんど。そこでトムスはその状況に対して自分たちが何をできるかと考えたところ、今回のレストア事業になったというわけだ。 トムスは長年にわたりレース活動をしているため、今はもう退職したメカニックなどもいる。そうした方はそれこそTOM'Sクラシックにて扱っている車両を現役時代に、レーシングの世界で散々メンテナンスをしてきたわけだ。それだけにクルマ全体でどこをどう触ればいいかという知識は豊富で、そのための技術も身に付けている。 そこでトムスはそうした人材を再雇用することで、当時を知るメカニックやエンジニアによるレストアサビースのTOM'Sクラシックを実現させたというわけだ。 また、トムスには当時のレース用パーツ、純正パーツの在庫もあるので(これはおどろき)、パーツの供給には困らない状況とのこと。さらに現代の技術である3Dプリンターなどを活用することにより手に入らないパーツの、例えば内装品などの制作も可能となっている。こうした環境をフルに活用することで、当時のクルマを現在の技術によって直していけるのだ。 ここからは少し具体的な内容を紹介しよう。展示してあるAE86ではボディに使われる鉄板自体が今とは異なるもので、一見するとなんともないように見えるが、実は歪んでいることが多い。そのため、まずはボディがどんな状態かをしっかりと見極める必要があり、そのために使うのが平行が正確に出ている床(定盤)。ここにクルマを乗せた後、最新型のフレーム修正機を使って数値を測定し、そして正しい寸法へ直していくという。 それに加えてTOM'Sクラシックの作業では旧車のボディに対して、現行車のボディのような剛性感を出すことを目的に、クルマごとの要所となる部分に適切な補強を入れていくことも行なっている。そうして作られたボディはきれいなだけでなく、サスペンションがよく動く、クルマの挙動がよく分かる。そうしたボディに仕上げてくれるのだ。 このような内容のTOM'Sクラシック。内容が内容だけに費用は安くないというのは想像できるだろうが、ボディにしてもエンジンにしても「オリジナルを尊重しながら、より洗練されたスタイルと性能に仕上げる」という内容は唯一無二のものだけに「手放す気はない」と思えるクルマであれば、費用対効果は十分にあるのではないだろうか。 トムスは2024年に創業50周年を迎え、改めてトムスのビジョンである「クルマに乗る喜びと、人生を楽しむきっかけづくりを提供する」をテーマとした車両も展示している。内容は「レーシングDNA」をGRヤリスで、「ユニバーサルスポーツ」はクラウンスポーツ、そして「アーバンオフローダー」はランドクルーザーとなる。TOM'Sブースに立ち寄るときはこれらの展示車にも注目していただきたい。
Car Watch,深田昌之