奥山和由(監督)×中村文則(原作)×瀧内公美(主演)で描く“火”の物語「奇麗な、悪」
名プロデューサーの奥山和由が劇映画としては「RAMPO」以来約30年ぶりに監督を務め、芥川賞作家・中村文則の短編小説『火』を瀧内公美主演で映画化した「奇麗な、悪」が、 2025年2月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国で順次公開される。
人混みを糸の切れた風船のように歩く一人の女。ある館に辿り着き、そこが以前にも訪れた精神科医院だと思い出す。人の気配はない。吸い込まれるように中に入り、かつてのようにリクライニングチェアに横たわる。目の前にあるピエロの人形に見つめられているようだ。「火の、、、火の話から始めることにします」幼少時、カーテンに火を放ったことで起きた事件から女は話し始める──。 “絵の中の画家を裸婦が見つめる”という逆転構図で描いた後藤又兵衛の絵画『真実』が印象的に映り込み、全編を彩るピエロの口笛のメロディを国際口笛大会(IWC)優勝歴のある加藤万里奈が担当。瀧内公美の一人芝居とともに見せる不思議な世界に注目だ。
〈コメント〉
■中村文則(原作) 映画は、小説よりもどこか「前」を向いている印象がある。 瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。 この映画はこのように完成したことで、「火」の主人公を救ったのかもしれない。 あらゆる文化が平均化していく中で、このような作品が日本映画にあることが、嬉しい。 ■瀧内公美(主演) 2022年6月28日、とっても不思議な映画の企画が届きました。 ひとりの女性が延々と喋り続けている。果たしてこれは映画として成立するのか? 突飛な企画過ぎるけど、ひとり芝居の経験がない私は挑戦してみたいと思いました。 そしてこの女性はこれだけ喋り続けているけれど、このひとが“言わないこと”、“言えないこと”ってなんだろう?を探し続けることとなりました。奥山監督をはじめ、スタッフの皆さんと大勝負に出たこの作品をどう受け取ってくださるのか楽しみにしています。 ■奥山和由(監督) 20世紀を代表する映画監督、イングマール・ベルイマンは晩年「A SPIRITUAL MATTER」という女優の一人語りの脚本を仕上げ、映画化を熱望した。にも関わらず、あまりにも突飛なコンセプト故に出資者が見つからず実現出来なかった。 自分の才能はかの巨匠の足元にも遥かに及ばないが、最後にそのような映画を作りたいと思ったベルイマンの想いは相似形のものとして痛いほど理解できる。 幸運なことに自分は中村文則の魅惑的言葉と瀧内公美の演技力に恵まれ、実現出来た。さらに撮影監督の戸田義久さん、口笛奏者の加藤麻里奈さん始め才能豊かなスタッフ方々が集まってくれた。本当に幸せな映画だと思う。 そして我が映画人生の最後にこのような我儘を許してくれた全ての方々に心底感謝している。