そして白目に…『ガラスの仮面』にも登場! 少女漫画のスーパーエリート男子が“恋愛で挫折するシーン”
■結婚生活で初めての反省!? 『有閑倶楽部』菊正宗清四郎
一条ゆかりさんの『有閑倶楽部』に登場する菊正宗清四郎は、少女漫画界のなかでも突出したスーパーエリート高校生である。清四郎は大病院の御曹司で高校の生徒会長。5か国語を話し、成績はもちろん優秀で武道や運動神経にも長けている。このように何事も完璧にこなす彼はプライドが高く、基本的に恋愛に興味を持たないタイプだ。 しかしそんな清四郎が挫折し、反省をする回がある。それがコミック10巻に登場する「剣菱家の事情の巻」である。清四郎と同じ有閑倶楽部のメンバー剣菱悠理は、日本有数のやんちゃな財閥令嬢だ。ある日悠理の両親は優秀な跡継ぎを探すため、清四郎に婿養子になってほしいと頼む。将来の可能性に目がくらんだ清四郎はそれを快諾し、悠理と愛のない婚約をする。 その後義父の代わりとなって会長業に挑戦する清四郎だが、実際はなかなかうまくいかない。また腕力にも自信を持っていた清四郎だが、悠理から頼まれた師匠・雲海和尚との対戦では年寄りだとバカにしながら臨んだ挙げ句、和尚の「喝!!」の一攻撃によりあっさり完敗するのであった。 この経験により清四郎は上には上がいることを自覚し、これまでの自分を反省することになる。愛のない婚約ではあったものの、自分の思いあがった考えを大いに省みることになったのだ。
■冷血漢の人生を変えた少女との出会い『ガラスの仮面』速水真澄
美内すずえさんの『ガラスの仮面』に登場する速水真澄も、少女漫画界におけるスーパープリンスと言えるだろう。 真澄は大手芸能事務所・大都芸能の社長であり、幼少期から英才教育を受けてきた文武両道のイケメン社長だ。これまで欲しいものは実権や財力を使い何でも手にしてきたが、13歳の少女、北島マヤに出会ったことで自分の生き方がゆらぎ始める。 まず、マヤへの想いを自覚した真澄は“いや11歳も年下の少女だぞ…!”と、なかなか自分の気持ちを認めることができない。さらにマヤに好きな人ができたと知った際には、ショックでグラスを握りつぶして手を怪我している。 また宣伝のためにマヤの母を軟禁し、結果的に死なせてしまった際には、生まれて初めて罪悪感というものを覚えた。マヤとの出会いを通してこれまで崩れることのなかった心が大きく揺さぶられ、いくつもの挫折を経験することとなったのである。 そもそも真澄は高いプライドが邪魔をして、なかなかマヤに気持ちを伝えられない。それまで何事もクールにこなしていた真澄がマヤを目の前にすると、“冷血漢と呼ばれたこの俺が…”と何度もうろたえる。そんな姿は可愛らしくもあるが、なんとももどかしい。 自分の思い通りにいかない恋愛を目の前にしてうろたえるシーンは、読者にとって胸キュンでもある。それが人気作品である理由にもなっているのだろう。 今回紹介したキャラクターは、いずれも恋愛や結婚での挫折がなければパーフェクトな生活を送っていたかもしれない。しかし漫画に限らず、あまりにも順風満帆で失敗しない人生はつまらない。どうがんばっても自分の思い通りにいかない挫折を味わうことによって、人は成長するのだ。 完璧なプリンスが恋愛を目の前にしてうろたえる姿は、私たちにそんな教訓を教えてくれている気がする。
でかいペンギン