「AIコーディング」ツールの米新興Cursorがa16z主導で90億円調達
クラウドフレアの副社長を務めるリッキー・ロビネットの8歳の娘ファラデーは、最近X(旧ツイッター)に投稿した動画の中で、ハリー・ポッター風に回答するチャットボットの作り方を披露した。彼女は、Cursor(カーソル)という人工知能(AI)コーディングツールを用いて、「ハリーとチャット」というテキストボックスの追加や、チャットボットとの過去の会話の表示、背景のデザイン変更などをテキストベースのプロンプトで指示するだけでボットを作成した。 彼女は、Cursorが回答をタイプする間、稲妻のアイコンを回転させるようプロンプトで指示した。「これでうまくいったらすごくクールだわ」と彼女は熱っぽく語りながら待った。すると、数秒後には画面上にアイコンが現れた。 Cursorのコード編集ツールに魅了されているのはファラデーだけではない。OpenAIやMidjourney(ミッドジャーニー)、Perplexity(パープレキシティ)、Scale AI(スケールAI)などの大手AIスタートアップのエンジニアを含む3万人ものユーザーが月額20ドル~40ドル(約2900~5800円)を支払ってCursorのAIツールを利用している。 マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の4人のメンバーが2022年に創業したCursorは米国時間8月22日、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が主導し、スライブキャピタルやOpenAIが運営する投資ファンドのOpenAI Startup Fund、グーグルのチーフサイエンティストであるジェフ・ディーンが参加したシリーズAラウンドで6000万ドル(約87億円)を調達したと発表した。関係者によると、このラウンドでの同社の評価額は4億ドル(約577億円)に達したという。同社の年間経常収益は、既に1000万ドル(約14億円)を超えている。 Cursorをはじめ、多くのスタートアップがしのぎを削るAIコーディング市場には、多額の投資マネーが流入している。評価額が20億ドル(約2878億円)のCognition Labs(コグニションラボ)は、AI搭載ソフトウェア・エンジニアを立ち上げ、人の手を借りずにエンジニアリングタスクを遂行することを目指している。また、評価額が5億ドル(約720億円)のCodeium(コーディウム)は、一度に大量のコードを処理できるシステムを構築した。 スライブキャピタルのパートナー、マイルズ・グリムショーによると、これらのスタートアップの多くは、開発者が使用する既存のアプリケーション上で動作するボルトオン方式でサービスを構築しているが、AIモデルのトレーニングなどのタスクには一からインターフェースを構築する方が適しているという。