メディア女性へのセクハラ 警察・議員ら社外6割「今が声上げられる分水嶺」
現役記者らの任意団体「メディアにおけるセクハラを考える会」(代表・谷口真由美大阪国際大准教授)は21日、東京の外国特派員協会で会見し、調査に回答した女性35人、150件の事例を分析した結果を発表した。加害者は社外が60%で、3割は警察・検察関係者、議員ら、公務員など「権力側」だった。社内からのセクハラは40%で、2割が男性上司だった。被害は20歳代のときが5割以上を占めた。 会見した谷口准教授は「(財務次官からのセクハラを告発し、バッシングを受けた)テレビ朝日の女性記者の事例をみて、声を上げることはこれほど怖い思いさせられるんだと疑似体験された女性がたくさんいると認識している。だからこそ私のような第三者が声を集めて出すことで、エンパワーメントできる状況を作り出さなくてはいけない」などと話した。
谷口准教授らが調査、150件の事例集まる
調査は、福田淳一・前財務次官によるセクハラ問題をきっかけに実施し、4月下旬、Facebookを通してメディア関係者にセクハラ事例がないか事例を募った。新聞記者、放送記者、番組ディレクター、タレントなど20~50歳代の女性35人が応じたという。 調査結果によると、被害者の被害当時の年齢は20歳代が51%に上った。特に地方支局での被害が多かったという。谷口准教授は「日本的かもしれないが、男性が女性をからかうときに、恥じらいを楽しむというのがある。年齢を重ねていくとそれがなくなっていくためだろう」と分析した。 被害に遭った場所は、飲食店(カラオケ、バーを含む)が25%と多く、次に職場14%、取材現場11%、出張先5%、タクシーや相手の車中5%、自宅・相手宅3%、などだった。 加害者は60%が社外、40%が社内の相手だった。社外の相手で最も多かったのが、警察・検察関係者が12%。次いで国会議員ら政治関係者らが11%で、公務員8%が続いた。
セクハラ事例紹介「お風呂入れないから……」
事例として上げられた被害は典型的で、福田前次官の事例と似ているところがあった。当時30歳代だった全国紙の女性記者が取材していた警察幹部は日常的に下ネタばかり話す人だったという。 記者「今日、泊まり勤務なんです」 幹部「じゃ、お風呂入れないから、あそこが臭くなるね」 幹部を取材する記者は20歳代前半の記者が多く、他社の女性記者はうつ病を発症し、最終的に退社したという。 谷口准教授は「相手方が権力側の場合、情報提供の見返りというケースが非常に多い。権力側からのセクハラを社内で報告してもお前と取材者どっちが大事だと、消されるケースもいくつもあった」などと説明する。 社内でのセクハラは男性上司(支局長・デスクら)からが多かったが女性上司によるものも2件あった。この2件は「それぐらい我慢しなさい」という形のものだったという。谷口准教授は「メディアの中にいる人が、男性女性に関わらず、セクハラを嘲笑とかからかいの対象ではなく、正面から取り組む事案だと認識していただくことも大切なことだ」と訴えた。
質疑応答では「前財務次官のセクハラ問題で状況は根本的に変わったか」といった質問があがったが、谷口准教授は「今までは、報道する側の中にいる女性たちが声を上げられなかったが、これからは上げられるようになった。分水嶺だと認識しています」と回答。 一方で、政府が5月18日、「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」とする答弁書を閣議決定したことについて「バカバカしいことをまじめにやっている。いかにバカバカしいか伝えないといけないと感じている」と話し、未だにセクハラへの認識が甘い人たちの意識を変える必要性に言及した。