太陽光&風力発電で未来はバラ色?→そんなわけない!再エネ楽観主義者の致命的な「見落とし」とは
したがって、設置にかかる総費用(パネルが供給する直流電流1ワット当たりにかかるドル)は、2010年から2015年にかけては55%の減少、2015年から2020年にかけては20%の減少と、あきらかに改善率が低下している。さらに、こうしたコストには、発電全体に占める不安定な発電(太陽光や風力)の割合増加によって必要になる追加経費は含まれていない。 ● 不安定電源をバックアップするための 莫大なコストは誰が負担するのか 長時間にわたる電力不足や電力供給の中断を防ぐには、こうした不安定な発電方式をいざというときに頼れる蓄電でバックアップするしかない。あるいは、太陽光や風力の発電に依存する地域が一時的な曇りや長期にわたって風が吹かない状態が続いた場合、影響を受けない地域から電力供給を受けるための信頼できる長距離高圧送電線が必要となる。 しかし、この電力供給システム全体のコストは低下しておらず、大規模な送電網の確保に必要な長距離高圧送電線の建設は、欧米でも計画より遅れている。それに太陽光パネルの実質的なコストには、本来であれば解体や廃棄の費用、できればリサイクルの費用も含めるべきだろう。
また、再生可能エネルギーによる発電のコストが急落しているのに、風力や太陽光といった新しい再生可能エネルギーによる発電の割合が高いデンマーク、アイルランド、ドイツのEU3カ国は、なぜヨーロッパ大陸のなかでも電気料金が高いのだろう? 2021年のEU平均は1キロワット時当たり0.24ユーロだったが、アイルランドの料金は25%、デンマークは45%、ドイツは37%ほど、それぞれEU平均より高いのだ。 そんなことはどうだっていいのだろう。そうした疑問、留意点、異議――基本的な物理学の事実、既知の定数、利用できる範囲の速度、容量――を述べたところで、ほとんどかえりみられることはなく、加速を続けるイノベーションによって克服すべき課題としてすべて扱われているのだから。
バーツラフ・シュミル/栗木さつき