「お前はもっと上をめざしてほしい」 エースは実業団で練習を積み、残された選手たちが成長 中央学院大が5位で箱根本戦へ
10月19日の第101回箱根駅伝予選会で中央学院大学が5位に入り、2大会連続での本戦出場を決めた。エースで主将の吉田礼志(4年、拓大紅陵)が日本人トップで本来の力を発揮しただけでなく、近田陽路(こんだ・ひろ、3年、豊川)も日本人6位(全体18位)の好走。エースに頼らないチーム作りが完成に近づきつつある。 【写真】日本人選手による大集団から序盤で抜け出し、レースを進める吉田礼志
「全体トップ」を狙ったエースで主将
吉田は今回出場した日本人選手の中で唯一、10000m27分台のタイムを持つ。昨年の学生ハーフマラソンでは駒澤大学の篠原倖太朗(4年、富里)に続く2位で、その年のFISUワールドユニバーシティゲームズでハーフマラソン4位入賞。昨年の第100回箱根駅伝予選会では、東京農業大学の前田和摩(2年、報徳学園)に続く2位だった。今回は前田がエントリーされず、日本人トップ争いは、吉田が中心になると目されていた。 「全体トップ」を狙ってスタートした吉田だったが、午前9時の時点で気温が23度を超え、湿度も高い厳しいコンディションだったこともあり、早々に抜け出した留学生集団にはついていかなかった。川崎勇二監督は「ついていかなったので『あれ?』と思ったんですけど、ただ5kmを14分30秒切って入るようだったら今日の天候ではきついから、自分で判断して単独走をしたのだと思います」と話す。 スタートから約8kmを走る陸上自衛隊立川駐屯地内で、吉田は早々に単独走となった。5km付近で、日本選手の中では唯一留学生集団についていき、落ちてきた東京大学大学院の古川大晃(博士4年、八代)に追いつき、その後方に大集団が形成された。吉田は「留学生の集団が速くて、このまま最後まで進むということはないなと思っていました。後半にかけて後ろに下がってくるということは分かっていたので、1人ずつ拾っていって前に行けたら。少しでもタイムを稼ごうという気持ちで走っていました」と冷静に振り返る。
吉田礼志が抜けている間、チームをまとめた近田陽路
立川市街地を抜けて国営昭和記念公園に入ると、先頭集団からこぼれ落ちてきた留学生選手を1人、2人とかわしていった。最後は5000mと10000m、ハーフマラソンの3種目で日本学生記録を持つ東京国際大学のリチャード・エティーリ(2年、シル)にも先着。全体10位でフィニッシュした。 川崎監督が描いていたレースプランは、吉田が留学生たちとレースを進め、近田が吉田を除いた日本人トップ選手と走る。残りの選手たちは二つのグループに分かれて集団走をするというものだった。予選会通過には吉田はもちろんのこと、日本人6位に入った近田の貢献も大きいと、川崎監督は言う。 吉田はこの夏、実業団の選手たちと練習を積んだ。6月の全日本大学駅伝関東地区選考会で上位7チームが本戦に進める中で11位に終わった後、吉田本人は「自分がチームを引っ張っていきます」と直訴したそうだが、川崎監督の答えはこうだった。「それは必要ない。吉田抜きのチーム作りをしている。だから、お前はもっと上をめざしてほしい」。吉田が抜けている期間、最も練習量が多く、チームに対して意見も言っていたのが近田だった。もともと今年3月の学生ハーフマラソンで2位に入った実力者。そこで得た自信を予選会でも発揮しただけでなく、夏場のチームをまとめたという点でも、貢献度は高かった。川崎監督は「近田には感謝したいです。『吉田に頼らなくても』というチーム全体の思いが、少しずつ出てきました」。