<私の恩人>石井一久、野村克也監督について語る
今の仕事で一番大変なのは“振れ幅”です。というのは、元野球選手ということで、会見の司会をさせてもらったり、メディアに出してもらったりもする。タレントということではなく、社員の仕事として。ま、ざっくり言ってしまうと、イロモノ的に注目を集めるというか、そういう“見られる”部分も大切な仕事です。 それとは別に、日々のいわゆる会社員らしい“見られない”仕事も当然しなければならない。例えば、ここ最近、頻繁に韓国に行ってるんですよ。というのは、韓国野球ではどういう選手が求められて、どういうコーチングがトレンドなのか。そういったナマの情報を集めておくことで、日本球界から次の場所を求めようと思う選手がいた時に、提示できるノウハウを作っておけるわけです。全然違うことを求められますが、どっちもやりきらないといけない。“見られる”自分がやるからこそ“見られない”仕事が前に進むこともありますし。 野村監督は自分のチームだけでなく、野球界全体を考えて人材を育ててきました。それが古田敦也さんであり、宮本慎也さんであり、稲葉篤紀さんであり…。そういった方々は、監督から教わったことをとどめずに、自分たちの“次”を育てている。だから、自分も監督からもらったものを、何らかの形で返していかないといけない。今自分にできることをまっとうして野球に恩返しをする。これが、僕にできる監督への恩返しにもなるんだろうなと思っています。 (聞き手・文/中西正男/株式会社KOZOクリエイターズ) ■石井一久(いしい・かずひさ) 1973年9月9日生まれ。千葉市出身。東京学館浦安高校卒業後、ドラフト1位指名で91年にヤクルトスワローズに入団。4年連続開幕投手を務めるなどエースとして活躍した後、2002年にロサンゼルス・ドジャースに移籍。ニューヨーク・メッツを経て、06年に東京ヤクルトスワローズに復帰した。08年からは埼玉西武ライオンズに移り、13年9月に現役引退を表明する。日米通算182勝137敗。14年4月、現役時代からマネジメント契約を結んでいた「よしもとクリエイティブエージェンシー」に契約社員として入社。マネジメントセンター・スポーツマネジメントエグゼクティブプロデューサーという肩書で会社員として働きながら、野球解説などの仕事も行っている。石井がPR会見の司会を務めたロシアの人気パントマイムショー「スラバのスノーショー」は、東京公演(6~17日、シアター1010)、大阪公演(20~24日、シアターBRAVA!)が行われる。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年、大阪府生まれ。大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」などに出演中。