<私の恩人>石井一久、野村克也監督について語る
日米で活躍した元プロ野球選手で野球解説者の石井一久さん(40)。今年4月から「よしもとクリエイティブエージェンシー」に入社し、吉本の社員として第2の人生をスタートさせました。7月31日にも、吉本が手がけるロシアのパントマイムショー「スラバのスノーショー」(東京公演・6~17日シアター1010、大阪公演・20~24日シアターBRAVA!)のPR会見で司会を担当。「こういう(司会の)仕事はしたくなかったのに…。やらされております」とまさかのネガティブ発言で爆笑を誘い、翌日のスポーツ紙をにぎわせることで大きな宣伝効果をもたらしました。プロ野球選手と吉本社員、全く違うフィールドながら、常に根底にあるのは、あの野村克也監督の言葉だと言います。 「恩人」…いろいろ考えたんですけど、やっぱり、野村克也監督です。1991年にヤクルトに入団して、現役当時はもちろん、今年4月に吉本に入ってからも、根っこにあるのは監督から教わったことなんですよね。「人生で大切なのは出会い」とよく言いますけど、今から考えると、本当にすごい巡り合わせだなと。プロ野球に入るということは、12球団あるので、いわば“上司”になり得る人が12人いたということ。その中で、僕は野村監督が上司になったわけです。会社でも上司は選べない。けれど、上司によって、出世が大きく左右されるのも事実。そう考えると、僕は出世できるラインに乗せてもらったようなもんだと痛感しています(笑)。 僕が野村監督から教わったことで、最も深く残っているのが「野球人である前に社会人である」ということ。言われたのは入団当時ですから、もう20年以上も前の話です。その頃は予想すらしていなかったですけど、今は吉本の社員ですからね。すべてを見越して、おっしゃっていたのかと思うくらいです…。何というのか、野球選手という世間とは少し違う世界の中でも、「1ミリは1ミリに感じる大切さ」というのか。「1ミリを2センチ」とかに感じだすことが多いのが野球の世界。ただ、そうなると完全におかしくなってくるわけです。今も、1ミリを1ミリと思えることに感謝しています。本来、当たり前のことではあるんですけど。 吉本に入ったのは、周りで引退していくメンバーを目の当たりにしてきたことがきっかけでした。スポーツ選手で何が一番不安に思うのかというと、結局、引退後の生活なんですよね。幸い、僕はこの歳になるまで現役をさせてもらって、正直な話、ほとんど不安はなかった。ただ、選手ほぼ全員が不安を抱えている。そこに対して、自分が何かできないものか。同時に、僕一人がやっても、できることなんて限られている。どうせやるなら、影響力の大きなところでやった方がいい。そんな流れで出てきた答えが、吉本に入ってスポーツ選手をサポートするマネジメントを行うということだったんです。