【市川紗椰の週末アートのトビラ】「夢の邸宅」東京都庭園美術館へ
市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第21回は東京都庭園美術館で開催中の「開館40周年記念 旧朝香宮(きゅうあさかのみや)邸を読み解くAtoZ」を訪問しました。 【写真】胸が高鳴る!東京都庭園美術館の館内めぐり
今月の展覧会は…「開館40周年記念 旧朝香宮(きゅうあさかのみや)邸を読み解くAtoZ」
■“約100年前、最先端のデザインと最高のセンスを盛りに盛った「夢の邸宅」拝見!” 今まで訪れた展覧会では、基本的に「美術館に展示された作品」を鑑賞してきましたが、今回は、美術館という“ハコ”そのものを楽しむ展覧会。東京都庭園美術館の本館である、旧朝香宮邸の“素の姿”を探訪してきました! ここは1933(昭和8)年、皇族・朝香宮家の邸宅として建てられた建物。邸内には、時代を席巻していたアール・デコの様式美がふんだんに取り入れられています。寄木細工の床、幾何学的にデザインされたガラス窓の枠、モチーフの隠された鉄製の格子、部屋ごとに違う照明、壁のクロス……部屋を巡っては「ああ可愛い」「まあ素敵」と呟き、最終的に語彙力を失う私。素敵なものは削ぎ落とさず、どんどん盛って!というのが大好物、ミニマリストの逆をいく“マキシマリスト”にはたまらん空間です。 朝香宮夫妻は、1925年にパリで開催されたアール・デコ博覧会で、当時の最先端をいくアーティストの作品に実際に触れたそう。その体験を通じて、自邸の設計時に細かに指示を出したと聞き、私は身をよじりました。「うらやま……!!」。特に印象的だったのは、芸術に親しみ、邸内のデザインにも熱意を注いだという允子(のぶこ)妃のエピソード。自室に込められた乙女な装飾に「いいなあ」という羨望と、同志を見つけたかのような共感を覚えます。自分の住まいを、こんな風にすみずみまで好き放題(失礼!)に設えることができたら、なんて楽しかったことでしょう! 視線を向けた先のどこにでも、センスのいいものが発見できて、さらには写真撮影も可能。部屋ごとにAからZのアルファベットが割り振られた解説カードが配布され、集めながら展示をたどるのも粋な仕掛けです。約100年前のプリンセスの家づくりを想像して思わず笑みがこぼれる、夢の詰まった世界でした。 2階は朝香宮家が家族で過ごしたプライベートな空間。大階段を上った先に、広々としたホールが。窓枠の直線と、照明柱の花をモチーフにした装飾金物の曲線の対比も素敵!